【トロント映画祭】マッツ・ミケルセンの顔が台無し! そしてC.カウフマンのストップモーション(傑作)! かっ飛び映画を2本ご紹介

  • 【トロント映画祭】マッツ・ミケルセンの顔が台無し! そしてC.カウフマンのストップモーション(傑作)! かっ飛び映画を2本ご紹介 - Photo Courtesy of TIFF

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次は、私が観た中でもかっ飛びの作品をふたつ。

1本目は、デンマークの監督アナス・トマス・イェンセンによる”Men & Chicken”。

そもそもマッツ・ミケルセンが主演だから観に行ったのだけど、一緒に観たジャーナリストの友達に「まさか、これがマッツ・ミケルセン?」と確認してしまった。それほど顔が台無しになっている。しかも、キャラとしても、隙あらばマスターベーションしまくるというとんでもない役なのだ。

映画そのものは、めちゃくちゃ笑えるのに、あり得ないくらいダークなコメディという作品になっている。そして実は最後の最後に心温まる結末があるんだけど、そのメッセージを伝えるための手段がスゴすぎる。観終わった後、その友達と、そう言えばシェークスピアが「デンマークは、何かが腐ってる」と書いたという話を思い出した。まあ「腐ってる」はもちろん言い過ぎなんだけど、この発想は日本からもアメリカからも絶対に出てこないと思った。

物語は、ある日主人公の父親が死んで、弟とその遺品を調べていたら、父からのビデオテープが残っていて、そこで「自分は実の父ではない」と明かされるというものだ。そこで主人公は実の父親を捜しに行き、ある島の寂れた豪邸で、本当の兄弟に出会う。しかし、実の父親は特殊な研究をしていた人で、そこでとんでもない事実が発覚するのである。それが何だったのか言ってしまうとネタバレでつまらないので言えないのだけど、とにかく家の中に動物がたくさんいる、とだけ言っておく。

映画が終わった後に観客からのQ+Aがあって、監督に「これはデンマークの人達を象徴していると思うか?」という質問があり、監督が「してないけど、ある地域にはこういう人達がいる」と答えて大爆笑。さらに、どうやってこの映画を思いついたのかと誰かが聞いたら、「子供が生まれて、子供達を見ていたら、人間の進化というのがいかに繊細なものなのか気付いたから」と答えてこれも大爆笑。

予告編はこちら。

もう1本は、チャーリー・カウフマンのストップモーションアニメ"ANOMALISA"。
これは過去に観たこともないようなストップモーションアニメにして、あまりに笑えて感動的で、何より人間の悲しみと孤独をどんな映画よりも表現してみせた傑作。”Men & Chicken”と共通しているのは、普通じゃない手段で人間の真理を何より強烈に言い当てた作品だということ。

物語は、成功しているビジネスマンがスピーチをしにシンシナティのホテルに出張するところから始まる。彼は、昔付き合っていた彼女とそこで会うのを楽しみにしているのだが、それはうまくいかずに、彼のスピーチを聞きに来たLISAという女性と出会う。主人公と彼女は非常に親密な関係になり、パペットながら、かなりリアルなセックスシーンもあるのだ。

登場するパペットはいくつもいるのだけど、声を担当するのは3人だけ。デヴィッド・シューリス とジェニファー・ジェイソン・リーとトム・ヌーナンのみだ。なぜ3人だけなのかというのにも理由があって、監督は上映後のQ+Aで「どのように撮影したのか?」という質問に対して「とにかくめちゃくちゃ時間をかけて撮った」「最初は声だけの芝居だと考えていたから、映画にするつもりはまったくなかった」と答えていた。しかし「もし資金が集められるなら映画ももちろん考える」と思ったそうだが、まさか資金が集まるとは思っていなかった。そんな時にアイディアのための資金集めサイトKickstarterが始まったから試してみたら、1週間で必要な資金が集まってしまったのだという。

また、セックスシーンについてはカウフマンが上映後「パペットのセックスをジョークにするつもりはまったくなかった。ふたりのキャラクターが、本当の人間だったらどう行動するのか考えて、それをそのまま描こうとしただけ。すべては親密で、リアルにすることが目標だった」と語っている。ジェニファー・ジェイソン・リーも「セックスシーンでは、自分が演じているのは人形の声だということを忘れてしまった。自分の体でもないのに、これまでで最も自分を曝け出したように思えるセックスシーンで、すごく恥ずかしかった」と語っていたほどだ。それはつまり、心がそれだけ曝け出される作品だということなのだと思う。

実は日本の古いセックス用のオモチャも出てきて、その人形が桃太郎さんを歌い出す、というシーンがウケた。ちなみに映画を紹介した映画祭のキューレーターは『エターナル・サンシャイン』以来の最高の恋愛映画、と紹介していた。
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