ケンドリック! メタリカ! リアーナ! クリス・マーティン+エディ・ヴェダーなどが出演したチャリティイベント映像が8時間分全編公開中

pic by SACHYN MITAL
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pic by 2016 KEVIN MAZUR
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週末、NYのセントラル・パークで、今年で5回目となるグローバル・シチズン・フェスティバルが開催された。私も観て来た。6万人が集まったこのイベントに出演したのは、リアーナ、ケンドリック・ラマー、エディ・ヴェダーとクリス・マーティンの共演、メタリカ、エリー・ゴールディング、メジャー・レイザーなど、毎年のことだがそうそうたるメンツ。その約8時間のイベント全映像が、今公開されている。笑ったのは、リアーナの準備が遅れていたため、その時間の穴埋めにとクリス・マーティンがギター1本で出て来て、プリンスの“ラズベリー・ベレー”をカバー。2番まで歌ってもリアーナが準備出来なかったため、リアーナを待っていることについて即興で歌ってみせたこと。

出演した順番は以下の通り。
1. 1:11 メジャー・レイザー(エリー・ゴールディングがゲスト出演)
2. 1:35 デミ・ロヴァート
3. 2:02 アッシャー
4. 2:29 ユスフ/キャット・スティーヴンス(エディ・ヴェダーがゲスト出演)
5. 2:51 Yandel
6. 3:19 メタリカ
7. 4:05 エリー・ゴールディング
8. 4:40 ケンドリック・ラマー
9. 5:48 エディ・ヴェダー+クリス・マーティン
10. 6:24 クリス・マーティンのプリンス・カバー
11. 6:31 リアーナ

ハイライトをいくつか。

1. 2:33 キャット・スティーヴンス+エディ・ヴェダーによる“Father & Son”。歌詞の一言一言がすごくシンプルなのに、まるで今の時代を映し出しているようでしみこんでくる。

2. その後のキャット・スティーヴンスのコメント――「この曲で歌っているように、今人々の心と魂の間にはすごく距離があるように感じる。もし自分の子供が難しいことを言い出したら、その子を部屋に閉じ込めてしまうだろうか? そうではなく、その子の抱えている問題を理解しようとするはずだ。そして助けようとするはずだ。現在、世界中にある問題というのは、宗教や肌の色の違いのせいではないのに、そのアイデンティティが汚名を着せられ、ラジカルに伝わってしまっている。だからこの“グローバル・シチズン”というイベントが、お互いに対してより繊細な気持ちも持って接して、人間として“分かち合う”ことがどういうことなのかを考えるきっかけになれば良いと思う。地球というのは、全員が分ち合える程十分大きい場所だから」

3. ケンドリック・ラマー全部。キャット・スティーヴンスのように古い曲ではないが、例えば“オールライト”のような曲に、すでにどれだけの普遍性があるのかが分かる。

4. エディ・ヴェダー+クリス・マーティン全部。1曲目はクラウデッド・ハウスの“Don't Dream It's Over”カバー。「世界が僕たちの間に壁を作ろうとしている」、「だけど奴らに勝たせてはいけない」と歌う歌詞が今の状況を的確に歌い上げている。
2曲目は、“Nothing Man”。
3曲目は、パティ・スミスの“People Have the Power”カバー。エディはその曲の中で、「夢について書いてくれたパティに感謝したい」と語った後、今の情勢についてコメントした――「だけど俺達は今日々起きていることで一杯一杯で、その夢を忘れてしまっているかもしれない。またはその夢を信じることができなくなっているかもしれない。またはその夢が現実になるなんて思えない世の中になっているかもしれない。だけど、今ここには、公園の木から街のビルまで、最高の人達が、様々な人達が埋め尽くしている。希望を持った、インテリで、活動家達で、そして強靭な心を持った人達が。今日のこのステージからここで起きていることを見ていると、パティに伝えたくなる。あなたの夢は今夜土曜日のセントラル・パークで生きていると。そして大統領候補者の中に、人種差別主義で、同性愛嫌いで、男女差別主義者の醜い考えの奴が上位にいるように思うが、それはサインなんだ。しかもすごく良いサインだ。なぜならそれが最後の一握りであるという。つまり、これを最後に古くさい考え方は消え去るという証拠なんだ。だから、今それが最後に浮上している瞬間を目撃しているんだ。そして現代の世界で、コミュニケーションの発達があり、人々が理解できるようになった世の中で、この古くさい考え方の居場所はもうなくなる。そして、それが今の俺達が打破すべき挑戦だ。俺達が団結し、そしてこのような組織を支援し、それぞれの市や街の役員をコントロールすればいいんだ。ここに集まった人達を見てみれば分かる。力を持っているのは俺達なんだと。だから活動し続けるんだ! 自分の声を使い、そして投票権を使え! そして良い方向に行く様に、団結してその力を使うんだ」

5. リアーナのライブ全部。これだけのメンツが揃っていながら、彼女がスターとして、ヘッドライナーとして立っているということが凄い。また、彼女も自分で言っているが、小さい島からここまでやって来た自分も“グローバル・シチズン”の一員である、ということ。そういう彼女がこれだけの観客をまとめあげているということ自体が、人種を越えて団結するこのイベントの主旨を定義している。さらに、リアーナの単独ツアーも観たけど、その時より良いライブをしていることに感動した。


グローバル・シチズン・フェスティバルは、全世界でネット中継された他、セントラル・パークに集まった6万人のチケットが無料で配布された。ただし、インターネット上で活動をしないともらえない仕組みになっている。プレス・リリースによると、その結果、貧困、教育、医療、地球環境、飲料水などの向上のために、ツイートやメールで130万もの活動が行われ、各国の政治家が44の公約をすることに繋がったそうだ。これは、約1億9900万人の人達の生活に影響を与えることになる。グローバル・シチズンのメンバーとして登録している人は、全世界に6億5000万人いるため、その人達が一斉にツイートをしたり、各国の大統領などにメールを送ると、ものすごい数が届くので、実際に何かを変えていくことに繋がる。それが過去のチャリティ活動とは大きく違うところだ。最大の目的は、2030年までに貧困をなくすこと。

世界の貧困をなくすことを目標にこの組織を設立したのは、現在まだ33歳、オーストラリア出身のHugh Evansだ。毎年イベントに出演している同じくオーストラリア出身のヒュー・ジャックマンは、あるパーティで彼と知り合い、貧困をなくすという話を聞いた時に、それは無理だろうと思ったそうだが、彼の話を聞いているうちに可能だと思え、それ以来活動をしていると、この日もステージ上で語っていた。

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