『君の名は。』引き続きアメリカで話題に。新海誠監督インタビューをNYタイムズ紙も掲載。


LA批評家賞のアニメ部門を受賞したばかりの『君の名は。』だが引き続きアメリカで話題になっている。12月5日付けのNYタイムズ紙も新海誠監督のインタビュー記事を掲載している。
http://www.nytimes.com/2016/12/04/movies/the-anime-master-of-missed-connections-makes-strong-contact-in-japan.html

宮崎駿監督との比較から、これまでのキャリア、影響など、短いがよくまとめられた内容だ。以下NYタイムズの要約。英語から日本語に訳しているので監督の言葉とずれがあったらすいません。

『君の名は。』の記録的な大ヒットにより、新海誠監督は、宮崎駿監督を次ぐ大監督になるのではと見られるといる。「非常に光栄ですが、過大評価だと思います」「宮崎監督の代わりになれる人はいませんから」

新海監督は、これまでカルト的な存在だったため、『君の名は。』が興行成績で日本の歴代3位になることは、期待をはるかに上回るものだった。前作『言の葉の庭』の10倍以上である。

日本でも批評は一般的には良かったが、予想外の成功となったのは口コミによるものが大きい。熱狂的なファンの中には、映画の重要なシーンのインスピレーションとなった場所を訪問する人達もいるくらいだ。

大ヒットというのは、新海監督にとってはこれまでになかったことだが、『君の名は。』で描かれているテーマは、彼のデビュー作である『ほしのこえ』から一貫したものだ。『ほしのこえ』は監督がほとんどひとりでコンピューターで作った作品で、そこで描かれていたのは、いかに若い男性と女性が、結びつきを持つのか、または持たないのか、についてである。

新海監督は、人と人の距離や関係性の喪失を探求するマスターである。人と人は、恋い焦がれながらもその違いによって大きな隔たりを持ってしまうことがある。そのことを寓話化するのに、彼は非常に長けているのだ。

監督は共通するテーマについてこう語る。

「10代の時、それが自分にとっての世界の最大の謎だったんです。『なぜ人と人は結びつけないのか?』。それは、今でも取り憑かれていることです。だから、その謎の答えを今でも捜そうとしているんだと思います」

ただし、宮崎駿監督については、最大の影響力だったわけではないようだ。むしろ、庵野秀明と村上春樹に影響を受けたのだという。

また『君の名は。』では、10代の恋愛についてのみだけでなく、東日本大震災を思わせる自然災害による悲しみを描いている。

「最初からこの物語と結びつけて描こうとしていたわけではなかったんです。しかし、それは日本社会全体にとって、あまりに大きな災害だったわけですから」。

新海監督は、普通のアニメの監督とは制作過程が違う。脚本を最初に書くのだ。『君の名は。』に関しては、小説が先に発売され、130万部の売り上げを記録した。監督は絵を描き上げていく前に、デジタルタブレットを使って、台詞を並べ、音響と、音楽を付けてストーリーボードを作っていく。

監督は自分の絵の才能は普通程度だと言う。だからグーグルマップなどを使いながら絵を引っ張ってきて、それを元にしてアニメーター達が彼のビジョンを研ぎすましていくのだ。

『君の名は。』には、三葉のふるさとにおける日本の伝統的な文化と、東京での近代的なにぎわいがあまりにも美しく描かれている。とりわけ、携帯のスクリーンの光で主人公達の顔が夜に照らされる、殺風景とも言えるような光景が驚きの美しさで描かれているのだ。

「普通の人が何も思わないようなことがすごく大事に思えるんです。毎日の生活の中で、すごく小さなことに感動します。例えば外套が道に落ちていたりすると、それが何かすごく意味のあることに思えるんです。または、それがすごくたくさんのことを語っているように思えるんです。世界は、すべてを完璧に創ったと思うんです」。

記事の要約はここまで。

アメリカでは、オスカー候補の基準を満たすためにLAの劇場で1週間公開されたが、来年全国規模で公開されることになっている。

ちなみに映画批評家のレビューを平均するサイトRotten Tomatoes では現時点でなんと97%の超高得点。ただしアメリカの批評家はまだほとんど観ていないのと、オーストラリア、イギリスなど約30人の批評家しか計算されていないので、本当のスコアがどうなるかは来年まで分からない。
https://www.rottentomatoes.com/m/your_name_2016/

新海監督の濃厚で読み応え満載なインタビューは、CUTの最新号12月号とその前の11月号の2ヶ月にわたって掲載されているので必読だ。
http://www.rockinon.co.jp/product/magazine/143400
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