トレント・レズナーが手がけたテクノが炸裂する”ゼンデイヤ主演のセクシーなテニス映画”『チャレンジャーズ』。そろそろ日本の劇場公開終わるかも。お観逃がしなく。

トレント・レズナーが手がけたテクノが炸裂する”ゼンデイヤ主演のセクシーなテニス映画”『チャレンジャーズ』。そろそろ日本の劇場公開終わるかも。お観逃がしなく。 - pic by ERIC CHARBONNEAUpic by ERIC CHARBONNEAU

アメリカでは、公開週に興行成績1位を記録した映画『チャレンジャーズ』。監督ルカ・グァダニーノはティモシー・シャラメの大ブレイク作『君の名前で僕を呼んで』(2017年)や、トム・ヨークがサントラを手がけた『サスペリア』(2018年)でも有名だが、『チャレンジャーズ』は、なんと『君の名前で僕を呼んで』のアメリカ国内興行成績(1809万ドル)を余裕で超えて(5011万ドル)、グァダニーノ監督の作品としては史上最高の興行成績となった。

アメリカのメディアでは、”ゼンデイヤ主役のセクシーなテニス映画”と呼ばれているこの作品。怪我で選手生命を絶たれたゼンデイヤ演じるタシと、ジョシュ・オコナー演じるパトリック、マイク・フェイスト演じるアートの三角関係を描いた恋愛心理スポーツドラマだ。今年前半のベスト映画リストにも軒並み選ばれている評価の高さだ。

トレント・レズナーが手がけたテクノが炸裂する”ゼンデイヤ主演のセクシーなテニス映画”『チャレンジャーズ』。そろそろ日本の劇場公開終わるかも。お観逃がしなく。 - pic by ERIC CHARBONNEAUpic by ERIC CHARBONNEAU

このサントラを、グァダニーノ監督の前作『ボーンズ アンド オール』同様に、トレント・レズナーとアッティカス・ロスが手掛けているのだけど、これがテクノで、攻撃的で、映画全体の鼓動のようでもあり、物語をエキサイティングにしている。

彼らはサントラですでにオスカーを2回も受賞しているけど、今回のスコアは、再び彼らの作品の中でも突出したものになっている。トレント自身も、「ラジカルで大胆」なサントラが完成したと語っているし、監督も「これまで観たこともないようなものになった」と語っている。

トレント・レズナーが手がけたテクノが炸裂する”ゼンデイヤ主演のセクシーなテニス映画”『チャレンジャーズ』。そろそろ日本の劇場公開終わるかも。お観逃がしなく。 - pic by NIKO TAVERNISE (C) METRO-GOLDWYN-MAYER PICTURES INC. ALL RIGHTS RESERVED. pic by NIKO TAVERNISE (C) METRO-GOLDWYN-MAYER PICTURES INC. ALL RIGHTS RESERVED.

オリジナルのサントラはこちら。
https://youtube.com/playlist?list=PL9tY0BWXOZFtWxOdOEeF91F4cW7e4SolQ&si=QOkUnhOJ9PfaiOzO

さらにBoys Noizeによる[MIXED]版もオリジナルより先に発表されていた。

実は日本でも公開して1ヶ月は経つのでそろそろ劇場での公開が終わってしまうかもしれない。この週末にでもぜひぜひ観て欲しい。

トレント・レズナーが手がけたテクノが炸裂する”ゼンデイヤ主演のセクシーなテニス映画”『チャレンジャーズ』。そろそろ日本の劇場公開終わるかも。お観逃がしなく。 - pic by NIKO TAVERNISE (C) METRO-GOLDWYN-MAYER PICTURES INC. ALL RIGHTS RESERVED. pic by NIKO TAVERNISE (C) METRO-GOLDWYN-MAYER PICTURES INC. ALL RIGHTS RESERVED.

このサントラについて、トレントや監督が語っているので、以下まとめてみる。

まずプレスリリースでは、トレント・レズナーがこう説明した。監督からメールが来て、「彼が、最初に言ったことのひとつは、”『チャレンジャーズ』はすごくセクシーな映画なんだ”ってことだった」。

またアッティカスは、「しかもXが6、7個付いていたんだ。すごくsexxxxxxyな映画ってね」と付け足す。

トレント・レズナーが手がけたテクノが炸裂する”ゼンデイヤ主演のセクシーなテニス映画”『チャレンジャーズ』。そろそろ日本の劇場公開終わるかも。お観逃がしなく。 - pic by ERIC CHARBONNEAUpic by ERIC CHARBONNEAU

その結果、トレントが言う「あまりにラジカルで大胆な」サントラが完成した。

2人は、プレミアではこう語っていた。

トレントが「バンドっていうのは自分がボスで全てをコントロールできるけど、映画でサントラをやる時は、自分がボスじゃないから監督とのコラボレーションとなってそれが面白いところなんだ。ルカとは、『ボーンズアンドオール』で仕事した時に、繋がりを感じたし人間的にもアーティストとしても素晴らしいと思った。それで今回は、ビート主体とした大胆不敵なサントラにしたいと言われて、もしそう言われていなかったら自分たちではできなかったような、非常に実りの多い結果となった。すごく楽しい映画になったと思うんだ」。

アッティカスは「楽しくてかつ複雑でもある」と付け足している。

トレント・レズナーが手がけたテクノが炸裂する”ゼンデイヤ主演のセクシーなテニス映画”『チャレンジャーズ』。そろそろ日本の劇場公開終わるかも。お観逃がしなく。 - pic by NIKO TAVERNISE (C) METRO-GOLDWYN-MAYER PICTURES INC. ALL RIGHTS RESERVED. pic by NIKO TAVERNISE (C) METRO-GOLDWYN-MAYER PICTURES INC. ALL RIGHTS RESERVED.

監督は、「僕が音楽に関して、最初に本能的に思ったのは、映画を観ながら踊りたくなるようなサントラにしたいってことだった。だからトレントとアッティカスに『レイブコンサートか、ハウスミュージックみたいなサントラにしたらどうかな?』と言った。音楽が映画の機動力にならなくちゃいけないと思ったから」「結果的には、これまで誰も観たことがないようなものになった」と語っている。

トレントは、「この映画のスコアを作るのは本当に楽しかった。この映画は一見テニスについてだけど、実はテニスについてとも言えない。この3人のキャラクターの人間関係を描いたものだと思うから。ルカは、僕らが考えてもみなかったような、激しいビートのエレクトロニカミュージックにして欲しいと言ったんだ」と語る。

「制作過程もこれまでのサントラとは全く違う体験だった。ビートとリズムが、映画と合っていなくてはいけなかった。だから映画に、音楽的に辻褄を合わせるように曲を作るのは本当に感動的だったんだ」
「テクノをいかにして物語を感情的に語る脈にするのか考えるのは楽しかった。このテンポを使って、映画のどのシーンが”勢い”を付けるのか考えたりした。またどのシーンは”競争”なのか、どのシーンが”羨み”なのか、など考えた。音楽が、物語を語るエンジンのようになるように考えるのがすごく楽しかった」
「ルカの本能は正しかったと思う」

トレント・レズナーが手がけたテクノが炸裂する”ゼンデイヤ主演のセクシーなテニス映画”『チャレンジャーズ』。そろそろ日本の劇場公開終わるかも。お観逃がしなく。 - pic by NIKO TAVERNISE (C) METRO-GOLDWYN-MAYER PICTURES INC. ALL RIGHTS RESERVED. pic by NIKO TAVERNISE (C) METRO-GOLDWYN-MAYER PICTURES INC. ALL RIGHTS RESERVED.

さらに、今回新しい試みとしては、エンドクレジットで流れる曲”Compress/Repress”を監督と一緒に作ったこと。

監督曰く「映画の終わりでは、すでにある曲を使おうとしていたんだけど、映画を完璧にまとめ上げるような新曲を作ったらどうだろう?って誰かが言ったから。歌詞を書いて、彼らに送ってみたんだ。もし気に入ってくれたら、曲を書いてくれないかな、ってね。そしたら彼らが曲を作ってくれたから、僕が初めて歌詞を書いた曲ができたんだ!」

トレントは「映画の最後の10分間は本当に勢いがあるから、その関心を維持したまま、感情的にシーンに合った正しい温度と流れを作らなくちゃいけなかった。それが楽しい挑戦となり、暗号を解いていくみたいな感じだった。すごく大胆なアイディアを持った監督が、僕らが絵を描く偉大なキャンバスを用意してくれたみたいな感じだったんだ」と語る。

また注目して欲しいのは、[MIXED]版を先に発表したこと。これは、ドイツのプロデューサーBoys Noizeにトレント達が依頼したものだが、彼が経緯をThe Wrapで語っていた。
https://www.thewrap.com/challengers-mixed-album-boys-noize-explained/

トレント達から、「自分たちが出すサントラは、映画があって初めて成立するものなので、それでは正しい方法ではないよう気がする。アルバムとして続けてかけられるような実験をして欲しい」と言われたそうだ。

彼は、NINを尊敬していたので、当初は、送ってもらった音源をあまりいじれなかったそうなのだ。だけど、仮にやったものを酷く気に入られて、「これをもっとやって欲しい」と言われて、最終的には、全て解体構築するような作業をしたそう。興味深いのは、最後の曲”Compress/Repress”。彼曰く「NINの曲に、最近ではジャスティスの新作が影響した”gabber”を使った」と。「めちゃくちゃ気に入ってくれた」と。

この[MIXED]版を聴いてもらうと分かるけど、彼らの思惑通り、オリジナルのサントラよりも、この方がアルバムとして断然聴きやすい。聴き比べて欲しい。



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