グラミー賞主催者「人種差別などまったくないし、その証拠にチャンスが獲った」と批判に返答。フランク・オーシャンへもコメント


発表されたばかりのグラミー賞。今年は、最優秀アルバム賞をビヨンセの『レモネード』ではなく、アデルの『25』が獲ったため、各所でその怒りが爆発している。

詳しくはこちら。
http://ro69.jp/blog/nakamura/156233

その批判を受けて、グラミー賞の主催者であるレコーディング・アカデミーの会長Neil Portnowがピッチフォークのインタビューに答えている。
http://pitchfork.com/news/71629-grammy-prez-neil-portnow-denies-grammy-race-problem-citing-chance-the-rappers-win/

人種差別であるという批判については、
「オスカーはそういう問題があったかもしれないけど、僕らはないよ」「人種差別なんてまったくない。そもそも投票しているのは、企業や組織ではなくて、音楽業界で仕事しているみんなの仲間なわけだからね。14000人のアカデミーのメンバーがいるわけだけど。なので、どうしても主観的になってしまうのは仕方ない。客観的な判断をするのは、すごく難しくなるから。でもそれがアートや音楽というものであり、その中で僕らはベストを尽くしているということなんだ」

さらに、投票者が、人種やジャンルに偏見なく投票している証拠として、今年チャンス・ザ・ラッパーが新人賞を受賞したことを挙げている。

「チャンス・ザ・ラッパーが新人賞を獲ったのは、投票者が、人種に偏見を持っていなくて、心を開いていて、良い音楽を聴こうとしているからだ。音楽が良いか悪いか以外のことは考えていない証拠だよ」と。

またフランク・オーシャンがボイコットした件については、こう語っている。

「みんながみんな組織の一部になりたいわけじゃないからね。それは尊重するよ。フランクに関しては、彼は早くから成功して、僕らは初期の段階から彼を応援していた。実際、グラミー賞も獲ったし、パフォーマンスもした。すごく嬉しく思っているんだ。彼がキャリアの早い段階から成功する基盤になったと思うからね。その後彼の気持ちが変わったということはあり得る。アーティストは気持ちを変えるからね。だから彼の決断を恨んだりしないし、今後が楽しみだよ」

フランクのグラミー賞へのコメントはこちら。
http://ro69.jp/blog/nakamura/156240

カルロス・サンタナが、オーストラリアのツアーの前に、オーストラリアのメディアになぜアデルが獲ったと思うかと聞かれて答えたことが話題となっている。

「アデルはしっかりと歌を歌えるからだよ。周りにダンサーやセットがなくても、ひとりで出て来て歌だけ歌える。ビヨンセのことはすごく尊敬しているし、見るのに非常に美しい人だと思うけど、モデルのように音楽をやっているように思う。彼女を尊敬しているけど、でもモデルが歌ってる感じで、本当の歌い手って感じじゃない」。
http://www.rollingstone.com/music/news/carlos-santana-apologizes-for-saying-beyonce-is-not-a-singer-w467183

あとで、サンタナはこの発言が誤解を招いた、ビヨンセを歌い手として尊敬しているとコメントしていた。

個人的には、誰がグラミー賞のメンバーなのか、その内訳を公表して欲しいと思った。というのも、オスカーの投票者は、94%が白人、76%が男性、平均年齢が63才だということが暴かれて、「白すぎるオスカー」という運動につながったから。それにより、去年683人という史上最高の新メンバーが加入した。新メンバーの割合は、46%が女性で、41%が白人以外だった。これによりわずかではあるが、白人の割合は全体の89%に、男性の割合は73%に下がったのだ。

ただ、会長の受け答えを聞く限りでは、グラミー賞は今後も態度を変える気はないように思う。ボイコットするアーティストが増えるか、受賞したアーティストが、「本来私がもらうべきではありません」と謝罪するグラミー賞が続くことになるのかもしれない。

アデルの前には、2014年に、マックルモア&ライアン・ルイスが、最優秀新人賞、ラップ・アルバム、ラップ・パフォーマンス、ラップ・ソングを受賞。その4部門すべてで、ケンドリック・ラマーの『グッド・キッド・マッド・シティー』を抑えての結果だったため、マックルモアがケンドリックにインスタグラムで謝罪したことが話題となった。

「本当はステージで言いたかった」と、ここでもアーティストを複雑な心境に追い込んでいる。

そして、マックルモアは今年、最新作をグラミー賞に提出しなかったらしい。

グラミー賞の会長は、解決策としてこういう提案をしていた。「もし自分の意見が反映されていないと思ったら、メンバーになって投票すればいいんだよ」と。
中村明美の「ニューヨーク通信」の最新記事