どん底の気分から早1年、ようやく春らしくなり一瞬気持ちが上がったように感じましたが、錯覚でしょうか? 皆さんいかがお過ごしですか?
というわけで、気分を少し盛り上げてくれる音源、映像がここ1、2週間でどんどん出ているので、ささっとご紹介。週末時間があったらぜひチェックしてください。
1)セイント・ヴィンセント
なんと取材できました! 来月5月7日発売のロッキング・オンにインタビューを掲載するのでぜひ読んでください。
このアルバムのタイトルが『Daddy’s Home』で、その響きにまず笑っちゃったんだけど、なんと「パパが家に帰ってきた」というのは、本当に、10年間刑務所に入っていたお父さんが出所して家に帰ってきた、という意味だった。びっくり。
でも、それを笑えるような響きのタイトルにできたことがこの作品のポイントだ。ファースト・シングル“Pay Your Way In Pain”のビデオでは、彼女がカサベテス映画のジーナ・ローランズばりの金髪ウィッグで登場しているのでそれも注目。さらに、最新のシングル“The Melting of The Sun”は、セイント・ヴィンセントがニーナ・シモンやロッキング・オン4月号の表紙に登場したジョニ・ミッチェルへ捧げる「ラブレター」として書かれた曲。
“Pay Your Way In Pain”
“The Melting Of The Sun”
週末に出演したテレビ番組でライブ映像も公開。
プリンス+デヴィッド・ボウイのような曲。
2)テイラー・スウィフト
テイラーがレコーディングしなおした『フィアレス(テイラーズ・ヴァージョン)』がとうとう解禁された! その前に、当時の未発表音源“Mr. Perfectly Fine”が発表。
笑えるのは、これはきっとジョー・ジョナスについて歌っているのだろうということで、最近ワクチンを打ったことをジョーが報告したら、全方向からツッコミが入ったこと。大手スーパーのWalgreensまで、「Mr.&(Mrs.)Perfectly Vaccinated」(パーフェクトにワクチンを打った)と言葉遊びしていた(笑)。
またテイラーは、テイラーのことが大好きなオリヴィア・ロドリゴに、レコーディングし直した『フィアレス』の中から、“You Belong With Me”を先に送ってあげたみたい。オリヴィアが超喜んでる姿をTikTokにポストしていて、かわいい。
3)オリヴィア・ロドリゴ
デビュー・シングルとしては史上最高となる大ヒットを飛ばしているオリヴィア・ロドリゴ。果たして一発屋で終わるのか?とみんな心配していたが、2曲目も最高で盛り上がってる。
“deja vu”
デビュー曲“drivers license”では車の免許を取ったばかりのオリヴィアだったが、この曲では、その車に乗ってマリブを走っている、という歌詞が登場。楽曲の始まりだけでもみんな、心をわし掴みにされている。
さらにその失恋物語の続きが歌われていて、オリヴィアが失恋の相手である元彼と行った店ややったことなどを、その元彼が今の新しい彼女とやっているのをソーシャル・メディアで目撃する「デジャブ」について歌われている。「そういう経験ってみんなあるでしょ。でも誰も歌っていない気がした」と彼女はインタビューで答えて言っていた。ただこの曲が、そこでジメジメと泣いて終わっていないのが痛快だ。なかでも、「ビリー・ジョエルを彼に教えたのは私だから」とパンチの効いたことを言っている。
ビデオの終わり方もすごい。失恋物語が思いきりリアルに伝わってくる。歌詞と曲のトーン、歌い方のミックスの仕方も本当に絶妙だ。デビュー曲はピアノ主体だったけど、ここではギターが効果的に使われてるのも良い。プロデューサーのDan Nigroはオリヴィア曰く「エモ・バンド」のAs Tall As Lionsのボーカル&ギターだった。
この曲は、テイラーの“Cruel Summer”にすごく似てると言われているけど、そういうところに対抗意識を燃やさずに、友達になっちゃうテイラーが偉い。
4)Flock of Dimes
正に「春」な気分のサウンド。Wye OakのJenn Wasnerによるソロのセカンド。自分らしくなれた作品。
”Two”
5)Japanese Breakfast
6月4日発売のアルバム『Jubilee』の期待も上がるシングル”Be Sweet”。
6)シャロン・ヴァン・エッテン
めちゃくちゃ楽しみな『Epic』の10周年記念アルバム『Epic Ten』が4月16日に発売のシャロン・ヴァン・エッテン。そこに付いてくるカバー・アルバムのメンツが素晴らしすぎて上がる。何しろ最後の曲はフィオナ・アップルだ!
Epic Ten:
01 Big Red Machine: “A Crime”
02 IDLES: “Peace Signs”
03 Lucinda Williams: “Save Yourself”
04 Shamir: “DsharpG”
05 Courtney Barnett: “Don’t Do It” [ft. Vagabon]
06 St. Panther: “One Day”
07 Fiona Apple: “Love More”
現時点で発表されている音源も最高。
7)ジュリアン・ベイカー
ここ最近ダントツでかっこいいジュリアン・ベイカーのライブ映像。なんと秋のツアーを発表した! これも上がる。
8)CHAI
CHAIは前作をピッチフォークに取り上げられてからというもの、すぐにレーベルのサブ・ポップと契約。今ではすっかり、米インディ・シーンの一員になったかのように馴染んでいる。海外進出するぞ!って力んでいたわけでもないのに、ひたすら自分たちらしくある、という態度が実は正に「今のアメリカ、そして世界」だったところが素晴らしい。
新作も、前作とはうって変わったサウンドで、彼女たちの可能性が広がったばかりか、どこかレトロでもあり、とにかく心地良いのがまた良い。コラボ曲なども発表されたばかり。
https://twitter.com/CHAIofficialJPN/status/1380237220779548673
https://twitter.com/CHAIofficialJPN/status/1377179924029530118
9)デミ・ロヴァート
ここで春の気分な曲とは真逆な重い曲。自分のドラッグでのオーバードーズの経験を正直に告白した衝撃的なドキュメンタリーの後にリリースされた新曲が凄まじい。
“Dancing with the Devil"
10)スフィアン・スティーヴンス
最後は心落ち着けるためにスフィアン。
『The Ascension』の発売から2日後にお父さんが亡くなったスフィアン・スティーヴンス。「悲しみと向き合う5つのステップ」というのが一般的にはあるけど、ここではスフィアンなりの方法で5枚のインスト・アルバムを制作し、向き合っている。その最初のステップ、「瞑想」が発表された。
実は今だから言うけど、『The Ascension』の発売の時にスフィアンにインタビューすることになっていた。それが、当日に飛んで大ショック。その理由は、「家族の事情」と言われたんだけど、本当に家族の事情だったのだと今分かりました。心よりご冥福をお祈りします。
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