グラミー賞ノミネーション発表。「秘密委員会」がなくなったのは良いが、最多ノミネーションがジョン・バティステ、って???? BTSが1部門って?????

グラミー賞ノミネーション発表。「秘密委員会」がなくなったのは良いが、最多ノミネーションがジョン・バティステ、って???? BTSが1部門って?????

何かと論争の多いグラミー賞のノミネーションが発表された。全ノミネーションはこちら。
https://www.grammy.com/grammys/news/2022-grammys-complete-winners-nominees-nominations-list

1)ノミネーション数が多かったのは以下の通り。
ジョン・バティステ 11部門
ドージャ・キャット 8部門
H.E.R. 8部門
ジャスティン・ビーバー 8部門
ビリー・アイリッシュ 7部門
オリヴィア・ロドリゴ 7部門

2)主要部門のノミネートは以下の通り。
レコード賞
1. ABBA: I STILL HAVE FAITH IN YOU ABBA
2. Jon Batiste : FREEDOM Jon Batiste
3.Tony Bennett & Lady Gaga : I GET A KICK OUT OF YOU
4. Justin Bieber Featuring Daniel Caesar & Giveon : PEACHES
5. Brandi Carlile : RIGHT ON TIME
6. Doja Cat Featuring SZA : KISS ME MORE
7. Billie Eilish : HAPPIER THAN EVER
8. Lil Nas X: MONTERO (CALL ME BY YOUR NAME)
9. Olivia Rodrigo : DRIVERS LICENSE
10.Silk Sonic : LEAVE THE DOOR OPEN

アルバム賞
1. Jon Batiste : WE ARE
2. Tony Bennett & Lady Gaga : LOVE FOREVER
3. Justin Bieber : JUSTICE (TRIPLE CHUCKS DELUXE)
4. Doja Cat : PLANET HER
5. Billie Eilish : HAPPIER THAN EVER
6. H.E.R. : BACK OF MY MIND
7. Lil Nas X : MONTERO
8. Olivia Rodrigo : SOUR
9. Taylor Swift : EVERMORE
10. Kanye West : DONDA

楽曲賞
1. Ed Sheeran : Bad Habits
2. Alicia Keys & Brandi Carlile : A Beautiful Noise
3. Olive Rodrigo : Drivers License
4. H.E.R. : Fight For You
5. Billie Eilish : Happier Than Ever
6. Doja Cat ft SZA : Kiss Me More
7. Silk Sonic : Leave the Door Open
8. Lil Nas X : Montero
9. Justin Bieber : Peaches
10. Brandi Carlile : Right on Time

新人賞
1. AROOJ AFTAB
2. JIMMIE ALLEN
3. BABY KEEM
4. FINNEAS
5. GLASS ANIMALS
6. JAPANESE BREAKFAST
7. THE KID LAROI
8. ARLO PARKS
9. OLIVIA RODRIGO
10. SAWEETIE

ロック・アルバム
1. AC/DC : Power Up
2. Black Pumas : Capitol Cuts - Live From Studio A
3. Chris Cornell : No One Sings Like You Anymore Vol. 1
4. Foo Fighters : Medicine at Midnight
5. Paul McCartney : McCartney III

オルタナ・ミュージック
1. Fleet Foxes : SHORE
2. Halsey : If I Can’t Have Love, I Want Power
3. Japanese Breakfast : Jubilee
4. Arlo Parks : Collapsed In Sunbeams
5. St. Vincent : Daddy’s Home

ラップ・アルバム
1. J. Cole : The Off-Season
2. Drake : Certified Lover Boy
3. Nas : King’s Disease II
4. Tyler, the Creator : Call Me If You Get Lost
5. Kanye West : DONDA

3)今回のノミネーションにあたり、いくつかのルールが変わった。
ー まずここ数年大きな論争となってきた「秘密委員会」が廃止された。グラミー賞のノミネーションは、これまでまず会員がそれぞれのカテゴリーで20アーティストを選んでから、「秘密委員会」が、独自の判断で、最終的にノミネートされるアーティストを決めていた。その選考方法が不透明であるのと、例えば、去年のようにザ・ウィークエンドを一つもノミネートしないというような不公平が起きるために、問題となり、それが今年から撤廃された。その結果、この27年間で初めて、約12000人の会員の投票によってノミネーションが決められた。

ー 主要4部門のノミーションが8アーティストまでだったのが、10アーティストまでに拡大。

ー アルバム賞のノミネートが、アーティストのみならず、マスタリングまで含めた制作に関わった人全てに。なので、カニエ・ウエストや、ジャスティン・ビーバーなどのノミネート者がA4用紙1枚分位ある。反して、ビリー・アイリッシュ、オリヴィア・ロドリゴ、レディー・ガガなどは極端に少なくて、ビリーに関しては、たった5人だ。

4)雑感
ー まず、なんと言っても誰もがひっくり返ったのが、最多ノミネーションのジョン・バティステだ。

彼は、ジャズ・ミュージシャンで、最近だったらピクサー・アニメの『ソウルフル・ワールド』で、トレント・レズナーとアッティカス・ロスとともに、オスカーを受賞した。聴き覚えがある人もいるかもしれない。しかしアメリカにおいては、夜のトークショー番組”The Late Show with Stephen Colbert”のハウスバンドとして、毎晩お茶の間に登場していることで有名だ。私はアルバムを聴いてなかったので、NYタイムズ紙の信頼するチーフ・ライターが書いている評を読むと、非常に才能のあるミュージシャンであり、アルバムは、ニューオーリンズ出身の彼がそのルーツを祝福しながらも、ビンテージのソウル、R&B、ジャズなどを、ポジティブな思想とメッセージと思慮深いステイトメントとともに作った作品。ブラック・プーマズのようにグラミー賞の投票者が正に好むサウンドである。しかし今回票が多く集まった理由は、毎日テレビに出ているのが大きかったはずだ、と。

ー ABBA???
これもジョン・バティステとともに、最大の驚きとして挙げるている媒体がほとんど。

とりわけABBAは、これまで一度もノミネートされていなかったのだ。多くが分析しているのは、グラミー賞は、本当に評価すべき時に、評価しない時代遅れなところがある。今回の場合も、本来何十年前にノミネートするべきだった人たちを今になってノミネート。しかし、そのおかげで、今ノミネートされるべき人が外される。

ー カニエの『DONDA』がアルバム賞でドレイクはなし?
時代遅れで評価すると言えば不思議がられているのがカニエの『DONDA』のアルバム賞ノミネートだ。カニエが自分の作品でアルバム賞にノミネートされるのはなんと2007年の『Graduation』以来だ。忘れもしない『My Beautiful Dark Twisted Fantasy』ではノミネートされていない。その時の屈辱的な気分と言ったらなかったし、徹底的に批判された。それなのに今回彼のキャリアでも最も評価の低いアルバムでアルバム賞?!?!もちろん売り上げは記録した作品だ。でもそれが評価されたとなるとドレイクは?!とグラミー賞の評価の意味不明さがここにも表れている、と言われている。

BTSがたった1つ???
これは最も大きかった批判のひとつで、LAタイムズなどもすぐにそれだけを記事にしていた。

BTSの”Butter”はたった1部門でしかノミネートされなかったばかりか、主要部門では一つもノミネートされなかったのだ。”Butter”は、シングルチャートで10週間も1位。ばかりか、”Permission to Dance”も”My Universe”も1位を取っている。レコード賞、楽曲賞は当然ノミネートされると誰もが思っていた。彼らは、この週末に放送されたばかりの”アメリカン・ミュージック・アワーズ”においては、完全に番組の主役という扱われ方だった。さらに、グラミー賞はこのノミネーションのアナウンスに彼らをわざわざ呼んでいるのだ。彼らが音楽シーンにおいてのみならず、テレビや雑誌などにとってもアメリカで今必要な存在あることは間違いない。それなのに、この仕打ち。屈辱的な気持ちにすらなる。

ー テイラー・スウィフトもたった1つ?
テイラーがたった1つしかノミネートされていないのも、批判されている。ただこれは賛否両論でもあり、『everemore』というアルバムは、シングルがヒットするタイプの作品というよりは、アルバム単位の作品だったので、アルバム賞でノミネートで良いのではないか?という意見もあった。

ー レディー・ガガが5つも? ブランディー・カーライルが5つも。カーライルは、アルバムがないのに!
→NYタイムズは、この2組にさらにH E.R.を足して、グラミー賞のお気に入りだから仕方ない、としている。
https://www.nytimes.com/2021/11/23/arts/music/snubs-surprises-grammy-awards.html

ーロック部門では、マネスキンがゼロ、tiktokで大人気のグラス・アニマルズが1?
いつものことだけど、ロック部門のノミネーションが古すぎるという批判。
ちなみに、マネスキンも、ノミネーションのアナウンスに登場した。

マシンガン・ケリーも怒ってツイートしていた。「グラミー賞、おかしくね」と。

ー ボイコットしたザ・ウィークエンドが3つもノミネート
プロデューサーとして、ドージャ・キャットや、カニエの曲でノミネートされた。

ー JAY-Zがノミネートされて、史上最多ノミネーションされたアーティストに。
JAYーZが今回ノミネートされたことで、計81回ノミネートされ、これまでタイで1位だったクインシー・ジョーンズの80回を抜いて、単独の1位になった。
JAYーZ 81回
クインシー・ジョーンズ80回
ポール・マッカートニー79回
ビヨンセ79回。

しかし、これは、ビヨンセの時と同様で、JAYーZは史上最高にノミネートされているが、主要4部門を受賞したことは一度もない。これは逆に侮辱なんじゃないかと思う。つまり、史上最高に主要4部門が取れなかったアーティストになるわけだから。酷すぎる。

というわけで、言いたいことはたくさんあるのだけど、長くなりすぎるので、とりあえずはここまで。

個人的には、本来なら、グラミー賞は音楽を祝祭するべき場所なのに、発表される度に、心が思い切り落ちる。「秘密委員会」がなくなって、少しはよくなったところもあるんだけど、大きく変わっていないどころか、ますます意味不明になってまとまりがなくなってしまったような気がする。一番大事なのは、色々な見方があることを考慮しても、最終的な結果が本当に2021年の音楽シーンを象徴するものだろうか?ということだ。

結論としては、毎回つい忘れそうになるけど、グラミー賞には期待するな(笑)。

グラミー賞の発表は、アメリカ現地時間の1月31日となる。



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