相変わらず趣味が良すぎるオバマ元大統領の年間ベスト・リスト。今年好きだった映画の筆頭に『ドライブ・マイ・カー』!

相変わらず趣味が良すぎるオバマ元大統領の年間ベスト・リスト。今年好きだった映画の筆頭に『ドライブ・マイ・カー』! - Courtesy of NYFFCourtesy of NYFF

毎年恒例、オバマ元大統領が、年末に発表する今年のベスト・リスト。現在、本と映画が発表されていて、明日音楽が発表されるけど、相変わらず趣味が良すぎる。

今日映画が発表されたのだけど、その筆頭になんと、『ドライブ・マイ・カー』が選ばれている。もちろん、好きだった順とは書いてないけど嬉しい! 一瞬アルファベット順かなと思ったけど、Cで始まる『C’mon C’mon』が下の方にあるので、というわけではないのだと思う。

映画についてはさすがに私も全部観ているけど、選んでる作品がものすごくバランスが取れている上に、ものすごく趣味が良い。これを見ると、最近発表されたいろいろな映画賞のノミネートがいかに平凡でつまらないのかがすごくよく分かると思う。オスカーもそうなる可能性が大だ。


個人的には、ホワキン・フェニックス主演、マイク・ミルズ監督、音楽はザ・ナショナルのアーロン&ブライス・デスナーが手掛けた『C’mon C’mon』の何もかもが好きだったので、この映画を選んでくれたオバマに感謝。ホワキンと監督に取材させてもらったのでいつかどこかで紹介できると思う。日本も来年公開予定。

それから、オスロが舞台で、若い女性を主人公にした愛を探求する物語『The Worst Person In the World』が入ってるというのもオシャレすぎ。そんなお父さん(?)なかなかいない。

ニコラス・ケイジ主演の『PIG』までちゃんと観ていて、しかも選んでる。誰もが真っ先に観るような作品じゃないけど、観ると本当に素晴らしい作品。

その他のセレクションも良くて、個人的にはハテナと思うのも1本は入っているけど、でも人それぞれだ。

そう言えば、前回書き忘れたけど、『ドライブ・マイ・カー』は3時間ある映画なので、可能なら絶対に絶対に劇場で観て欲しい。日本でもまだ劇場公開中。間も大事な映画なので、家で観ると、絶対に途中でお茶入れたり、トイレ行ったりで、それが十分に楽しめない気がする。
https://theaters.jp/7524

オバマは、本のリストも発表している。

これはさすがに全部読んでないけど、ジャパニーズ・ブレックファストのミッシェル・ザウナーが書いた『Crying in H Mart』が入っていたのが嬉しい! 彼女は、今年の年間ベスト・リストにアルバムも軒並み入っていたし、良い年になったと思う。『Cyring in H Mart』はこれからMGMで映画化されるので、彼女は今自分で脚本を書いているそう。

そう言えば、さすがに自分では選んでないけど、オバマとブルース・スプリングスティーンが2人のポッドキャストを単行本にした『Renegades: Born in the USA』も素晴らしかった。赤線引きながらポッドキャストも聴きながら、読んでしまった。

ポッドキャストにはなかった部分も収録されている。偉大な2人のアメリカ人が、自分を語っていながら、アメリカを語っているのが最高だった。

オバマはリストを発表するにあたり、こうコメントしている。

「アートは私の魂をいつでも潤してくれた。でも、このパンデミックの間は、とりわけ音楽とストーリーテリングが、本当に必要なものに感じられた。閉じ込められていても、それが人と結びつきを感じる方法だと思えたから。

このリストは、自分が実際に聴いて、観て、読んだものの中から選んでいる。なので、本来なら選ぶべき価値のあるものが絶対に抜けていると思う。推薦するものがあったらぜひ教えて欲しい。このホリデー中に、その本や映画を観て追いつきたいと思うから」

音楽は明日発表される。楽しみだ!

追記:12月21日
2021年に好きだった曲リストも発表した。何しろミツキに始まりパーケイ・コーツに終わるオバマ元大統領のリスト。今時の若者に負けないジャンルレスな趣味に感動する。

Spotifyがプレイリストを作っている。

https://open.spotify.com/playlist/37i9dQZF1DX4ORnUUsfv3c?si=5314686aa18f4ad6

色んな友達からメッセージが来たけど、それぞれの友達がこんなアーティストが入ってるよ!と喜ぶツボが違ったのが素晴らしい。個人的に何より感動したのは、映画もそうだけど、音楽のリストを見ても、オバマがカルチャー的に言って今を生きているのが分かることだ。

昔、90年代終わりからホワイト・ストライプスやザ・ストロークスの誕生前夜で、聴きたい音楽がエミネムかシガー・ロスかアット・ザ・ドライヴインくらいしかなくて途方に暮れていた時に、X世代を代表すると言える映画監督のリチャード・リンクレーターに、この何もないように思える時代の音楽についてどう思いますか?と訊いたら、それは、カルチャーのせいじゃなくて、聴く側のせいなんだと思うと言われたのがいまだに忘れらない。カルチャーっていうのは形を変えてどこかに必ずあるものであって、聴く側が何らかの理由で今のカルチャーとの結びつきを持てていないから何もないように感じるだけなんだよ、と言われて感動した。それ以来、今の音楽が昔に比べてダメ的なことを言う人がいたりすると、それは、あなたの心のせいなのでは?と心の中で思うようにしている(笑)。長くなったけど、オバマはそういう意味で、今のカルチャーにしっかりと結びを付きを持っているのがこのリストでよく分かる。さすがにオリヴィア・ロドリゴが入ってないのにはむしろ安心した(笑)。



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