フー・ファイターズの新作リスニングが午前4時集合、日の出と同時に開催。しかし配布された歌詞カードでデイヴ・グロールのお母さんにも捧げられていることが判明。お母さんも亡くなくったのかもだ(涙)。

pic by AKEMI NAKAMURA

フー・ファイターズの新作『BUT HERE WE ARE』の発売を目前として、NYでなんと午前4時に集合で、新作リスニングが行われたので行ってきた(笑)。そんなに早く行くなんてと、友達にはバカにされたけど気にしない。

音楽の開始は4:45。この日の日の出は5:27で、アルバムが聴き終わるくらいに日が昇るというあり得ないくらい素敵な演出なのだ。長年この仕事しているけど、そんな早い時間に集合して新作を聴くという体験は初めてだ、ってだけでもすごい。

前のブログでフェスの時にデイヴ・グロールが「together」という言葉を何度も使ったと書いたけど、
https://rockinon.com/blog/nakamura/206422

このイベントの告知にも、「together」が2回使われていて、「みんなで集まって」「みんなで一緒に聴こう」と書かれていた。さらに「But Here We Are At Sunrise」という告知タイトルは、「今俺たちは日の出にいる」という意味にもなって、辛い時期を乗り越えて新たな一歩を踏み出そうとしているという意味に取れる。
https://foofighters.com/but-here-we-are-at-sunrise/

しかし驚いたのは、会場に入って配布された歌詞カードで、その最後に、「バージニアとテイラーへ」と書かれていたのだ。すっかり全曲テイラーに捧げられていると思っていたのだが、違ったのでまずびっくりした。


それで、バージニアというのはデイヴ・グロールのお母さんの名前だから慌ててその場でグーグルしたら、デイヴのお母さんも去年の夏に亡くなったと書いているサイトがいくつかあった。ただ、メジャーなメディアは書いてないし、公式には発表されていないので間違いだったら大変なことだけど、でもここで捧げられているのでそうなのかもしれない。

そうなると、デイヴは去年は春にテイラーが亡くなって、夏にお母さんが亡くなったということになる。人生において最も重要と言えるような人が2人も同じ年に亡くなるとは。それで、9月に2回もあんな巨大な追悼をやった気力が信じられない。

デイヴの父と母はデイヴが子供の頃に離婚していることもあり、デイヴは母とものすごく仲が良かった。それは、母が本『From Cradle to Stage』を出版した際も一緒にT V出演したのを見ていても明らかだったし、

そのあとは一緒にそれを元にした番組までやっていた。

この中でも語っていたけど、デイヴの母は高校教師で、デイヴはその同じ高校に通っていたのだけど、バンドに入ってツアーをしたいからと学校を中退。父からは勘当されるが、母はそれをむしろ理解して、行ってらっしゃいと言ってくれたような人だ。またデイヴは、その時TVでも言っていたけど、シングルマザーだった母は学校教師の給料だけでは子供達を2人育てられないので、その他の仕事もしていて、彼はそれを見て育ってきたので、懸命に仕事することを覚えたと。

そうやって考えると、まず先行で発表されたシングル”The Teacher” は、

前半は、人はいつか死ぬんだ、という逆らえない運命について歌っていると思うけど、後半の6分すぎた辺りからは、

「あなたは息の仕方は教えてくれたけど
さよならの言い方は教えてくれなかった」

というのは、お母さんに語りかけているとも取れる。
もっと一般的に、人は誰もが別れの準備ができてないという大きな意味でも取れるけど。

でも「グッバイ」と最後にノイズの中で叫ぶ時に、デイヴと笑顔のお母さんの写真が映し出されて消えていく(涙)。

デイヴの娘さんのバイオレットも夏あたりに、デイヴのお母さんのような写真をインスタに投稿していた。

さらにバイオレットと歌っている”Show Me How”も、


「心配しなくていいから
どうか心配しないでいいから

ここからは俺が全てを面倒みるから

でも今どこにいるんだ?
誰が俺にどうすればいいか教えてくれるんだ?」


と母に歌っていると取れる。

アルバムの前半と後半でキッパリと分かれてるとは言えないけど
でも、前半はテイラーに向けてで、

6曲目の”Nothing At All”で、

「君に嫌な思いをさせるつもりはなかったんだ
でも俺が言ったことのせいだったかな?
君を暗い気持ちにさせてしまったのは」

という歌詞があって辛い。
この曲まではテイラーに向けて歌っているのかもしれない。

それから最後の曲”Rest”で、アルバムの最後になる歌詞は、

「目が覚めて、また2人でいる夢を見た
暖かいバージニアの陽の中で。あなたに会うんだ」


で、これは彼の故郷だから、お母さんに歌ってるのかもしれない。

それでそこまで聴き終わった頃に、日の出の時間で、
「新たな日の太陽が昇る」という演出だったわけで、素敵すぎる。

pic by AKEMI NAKAMURA
pic by AKEMI NAKAMURA

このこだわりに作品へのバンドの思いも込められている。

アルバムは、このまま全曲ライブで聴きたいような作品だと思った。
私が観たフェスでは2曲しか演奏されなかったけど、フジロックに行くまでにもう少し増えているかな?

配られた歌詞カードの印刷も素晴らしかった。白の紙に白が浮かび上がるようになっているのだ。
デザインした会社のインスタによると、「ミニマルなデザインで、白の紙に白が印刷できる新たな技術を探求した」。
全く新しい挑戦だったそうだ。




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