今年の8月11日は、ヒップホップが誕生してから50周年にあたるとして、NYが市をあげて様々なイベントを行っているばかりか、なんとアメリカの上院では”ヒップホップ記念日”として祝う決議案が可決した。8月11日をヒップホップ記念日にするばかりか、8月の1ヶ月間をヒップホップ認識月間とし、11月をヒップホップ歴史月間に決めた。
1)これを記念して、ヒップホップが始まった場所、ブロンクスにあるヤンキースタジアムで、50周年を祝うイベントが行われた。
出演者は、上の通りだが、それがYouTubeでも生中継されている。
リンクはこちら。
https://www.youtube.com/watch?v=RgGyYGPTXCg
2)NYの地下鉄では特別地下鉄カードが発売中。
3)NYマンハッタンの図書館でも、特別図書館カードを配布中。
4)ブルックリン公立図書館では、なんとJAY-Z展が開催中で、これが感動的にカッコいい!
ビヨンセはその前日に私も観たフィラデルフィアで全米ツアー初日の熱狂ライブをしたばかりだったのに、その翌日にこの展覧会のオープニングに来ていた。偉すぎる。
この展覧会の何が素晴らしいかと言ったら、今それでなくても資金を削られている公立図書館ができるレベルの内容でないということ。内容ばかりかインスタレーションもデザインも本当にセンスが良いし、しかも思い切りお金がかかっている。レコーディングスタジオまで再現されているのだ。隣にあるブルックリン美術館で十分できる内容。JAY-Z側がお金を出して全て仕切ったこの展覧会は、美術館でやると来る人がお金を払わなくてはいけないし、行く人が限られる。図書館だったら誰でも無料で入れる。JAY-Zはいつでも人の中にいるべき人だと思うから、図書館で開催することにしたというのだ。彼が育った低所得者住宅はこのすぐ近くにある。億万長者になって、地元の図書館で還元するってなんて素晴らしいお金の使い方なんだろう。実際行ってみたら、大賑わいで、1週間で4万人が訪れたと言っていた。さらに、ここでも、JAY-Zの全作品のジャケットが描かれた図書館カードをもらえるようになっている。
面白かったのが、グラストンベリーの映像が流れている部屋があったこと。ノエル・ギャラガーに「グラストンベリーにはギターミュージックの伝統があるので、ヒップホップ(がヘッドライナー)というのは違う」と言言われたのを受けて、JAY-Zがヘッドラインで登場した際に、ギターを抱えて”Wonderwall”を演奏した有名なライブが大音量のサウンドと高画質の映像で映し出されているのだ。しかもそのギターも飾られている。しかも、その映像は単にライブ映像を見せたいだけではなくて、JAY-Zはヒップホップがいるべきではないと思われてきたような場所を開拓してきた人なんです、という彼の物語につながっていっているのだ。
5)NY市観光局もヒップホップイベントをいくつも主催。ブルックリン、ブロンクス、マンハッタンなど、各地区で、ブロックパーティを主催したり、ヒップホップ名所廻りの地図を作ったりしている。
6)写真展
7)ヒップホップ映像体験開催中
8)LL COOL J主催のRock The Bellsも開催
9)その他、市の観光局が主催して、リンカーンセンターで、サイレントDJが行われたり、スニーカーとヒップホップの歴史が紹介されたり、映画が上映されたり、ヒップホップは音楽のみならず、映画、ファッションなどカルチャー全般にいかに影響を与えたのかを紹介するイベントも行われる。
10 )ちなみに、50年前のこの日、ヒップホップが誕生したと言われている日に、ブロンクスにある1520 Sedgwick Avenueで初の”ヒップホップ”パーティをしたDJクール・ハークと妹のシンディ・キャンベル。その詳しい内容については皆さん調べてみてください。2007年に、このアパートはより高いアパートに改装されるところだったのだが、NY州が”ヒップホップ誕生の場所”として歴史的保存建築に認定した。ここで妹さんが、これからの51年も!と言っているけど、今回ライブなどで歴史を振り返りつつ、今目の前ではヒップホップはまだ進化し続けていて、かつメインストリームで最も売れるジャンルのひとつにまでなっているというところが、最も興味深いと思えた。NYタイムズでは、RUN DMCからアイス・スパイスなどまで、50人のラッパーにインタビューする特集を発表していた。
ロッキング・オン最新号(2023年9月号)のご購入は、お近くの書店または以下のリンク先より。
●『60年代ロックアルバム100』巻頭特集の8月号も合わせお楽しみください。
ロッキング・オン8月号のご購入はこちら。