約5ヶ月で2000万部も売れてしまった女性向けポルノ小説、映画化権争奪戦で獲得したのは『ソーシャル・ネットワーク』チーム!


CDが売れないと言っているそばで、アデルの『21』が全世界で2200万枚売れているように、本が売れないと言っているそばで、『Fifty Shades of Grey』がなんとアメリカだけ約5ヶ月で2000万部も売れてしまった。

2000万部ですよ!

世界で言うと4000万部らしい。

実はこの作品は3部作なので、1冊に付き700万部くらいになるけど、現在もNY TIMESベストセラーリスト、1,2,3位にランクインしていて、22週1位を獲得している。つまりまだまだ売れてるということ。

イギリスのアマゾンでも『ハリー・ポッター』シリーズの7冊を合わせたより売れているらしく、世界中でも『ハリー・ポッター』以上の早さで売れているらしい。

この小説の面白いところは、元々『トワイライト』の大ファンだったイギリス人主婦が、趣味で『トワイライト』の続きをファンのウェブサイトに書いていたことで始まったということ。しかし、徐々に内容がセクシャルになっていったため、そこから削除して自分のウェブサイトに掲載。それがあまりに人気になって、単行本化し、現象になってしまったということ。

この小説、とにかくBDSMなセクシャルな内容がディープに描かれているのが人気の秘密。なので、当初は、どうせ欲求不満の主婦達が読んでいるんだろうとバカにされていて「マミー・ポルノ」と呼ばれていたのですが、今ではマミーどころか誰でも読んでいる状態。もちろん、いまだに一般的には文学的な評価は低いままではありますが。笑ったのがトム・モレロまでこの間、「海岸に行って『Fifty Shades of Grey』を読んでない女性がいなかった」とツイートしていたくらい。

そんなわけで、それをバカにして終わるのか、ビジネスチャンスとしてみるべきかは言わずもがな。『トワイライト』だって大成功したわけだし。メジャー映画会社の映画化権争奪戦が行われ、なんと作家であるE.L.Jamesの指名で『ソーシャル・ネットワーク』を作ったプロデューサー達が制作することに!

彼らならB級小説と言われている作品を、もっと面白い映画にしているくれるはずと個人的にはそこで俄然期待。

さっそくアメリカでは、誰がこの主人公を演じるべきなのかで、女性達がきゃーきゃーと盛り上がっている状態。人気のバンパイア番組『トゥルー・ブラッド』に出演しているアレクサンダー・スカルスガルドがいいという人が多かったり、または、クリス・パインとか、マット・ボマーとか、クリスチャン・ベールとか、ロバート・パティンソンとか、みんなその過程を楽しんでいます。女性のほうも、例えば、クリステン・スチュワートが本を読んでいる姿が目撃されたりしています。

それで、私も買って、読み始めてみました! まだ81ページまでしか読んでいないのですが、なるほど。以下あら筋。ちょっとくだらないかもしれないので、興味のない人は読まないでください。

そもそも『トワイライト』の続きで書かれたのでノリは全体的に少女漫画的。

主人公のアナステイシア(22歳大学生+ヴァージン)が、親友に頼まれて、学校新聞の取材のためクリスチャン・グレイという、大成功した若きビジネスマン(27歳)のインタビューに行くことに。

このグレイという人は超かっこいいのだけど、ちょっとくせ者で、元々ヴァンパイアの続きで書かれたわけですから、冷たくて、影があるのです。その理由のひとつは、実は彼が養子だったということとも関係しているのですが、それでも当然ふたりはすぐに惹かれ合います。

彼は、億万長者なので、いきなりヘリコプターに彼女を乗せて、彼女の住むポートランドから、彼の住むシアトルに連れて行ったり、または、彼女が文学好きと知って、いきなりトーマス・ハーディの『テス』の初版本をプレゼントしたり、言ってみれば白馬の王子的要素もあるわけです。

しかし、彼は、ちょっと冷酷でミステリアスでもあり、とにかく女性とはセックスしたいだけで、人と付き合ったりしないという主義。なので、一線を超える前に契約書みたいなものにサインしなくちゃいけないらしいのです。彼女がある日酔っぱらって彼のホテルに泊まることになるのですが、まだ契約書にサインしていないため、そこで一線を越えることはありません。が、朝になって帰る間際に、やっぱりどうしてもキスしたくなってエレベーターの中でキスするのです。きゃ〜。そこで私的にはちょっと笑っちゃったんですが。もっと笑っちゃったのが、その後車に乗って、彼が「僕の音楽の趣味は広くてThomas TalisからKings Of Leonまで聴くんだよ」というと、彼女が「私Thomas Talisは知らないわ」と答え、じゃあと言ってカーステから流れたのがKings Of Leonの”Sex on Fire”だったこと。

ありえね〜と爆笑して、とりあえずそこまで読んだ状態です(笑)。なので、残念ながらディープなセックス描写まで辿り着いてないのですが(笑)。そもそも彼女がバージンという設定なので、彼にびしばし鍛えられながら色々と目覚めていくという物語なのだと思います。

世界37カ国で発売されているそうですが、まだ日本で翻訳されているという噂は聞きません。でも映画化もされるし、絶対されると思います。それまでの間、もし良かったらまた読んで内容をアップデートします(ウソです)。

『トワイライト』も、『ハリー・ポッター』も、『ハンガー・ゲーム』も、『Fifty Shades』も文学的価値はさておき、爆発的に本を売るのみならず、映画でも大儲け。しかも全作品女性が書いてるというところが興味深い。女子は不況でも元気!?
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