日経ライブレポート「バンプ・オブ・チキン」

意外かも知れないがバンプ・オブ・チキン20年のキャリアの中で、今回が初のスタジアム・ツアーである。これまでも動員力的にはいつでもスタジアム・ツアーが可能な人気を持っていたが、あえて彼らはそれを避けてきた。それは彼らがお客さんとの距離をとても大切にしてきたバンドであり、歌の届く距離に気をつかってきたからだ。その彼らが今回スタジアム・ツアーに踏み切ったのには理由がある。それは彼らの曲がスタジアムで鳴らされることを求めたからだ。

最新作「Butterflies」に収められた曲は、これまでになくポップで多くの人に受け入れてもらえる開かれたものだ。EDMという大胆なダンスビートを導入した「Butterfly」をはじめ、まさにスタジアムで鳴らされて、多くの人と共有されることによって高揚感がたかまる曲が多い。彼らは曲に導かれてスタジアムに立った。

日本で最大規模の会場を2日間で14万人のファンが埋めつくした。スタジアム・ライヴらしい巨大ヴィジョンやレーザーによるスペクタクルな演出もあり、2時間半はあっという間だった。しかしファンの心に残ったのは、スタジアムであってもバンプと聴き手の距離は変わらないということではないか。ステージでメンバーが語った言葉は、いつものようにパーソナルな自分と聴き手の関係の大切さや支持してくれることへの感謝であったし、その温度もまるでライヴハウスで語っているようだった。

たくさんの人に共有されることによって歌の高揚感は増したが、それはむしろメンバーと聴き手の距離を縮める奇跡も起こした。とてもバンプらしいスタジアム・ライブだった。

7月17日、日産スタジアム。

(2016年7月27日 日本経済新聞夕刊掲載)
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