オアシス解散から10年、ソロとしてのキャリアを重ねてきたノエル・ギャラガーのひとつの到達点を観ているようなステージだった。
2017年発表のソロ3作目『フー・ビルド・ザ・ムーン?』は、彼がオアシスとは違う、より独自のソロ・スタイルを作り上げた作品で、今回のツアーはその世界をライブによって、しっかり展開していこうとするものだった。
1曲目の“フォート・ノックス”から、前半は最新作からの曲が立て続けに演奏される。女性コーラスやホーン・セクションとのアンサンブルで築き上げられていく音世界は、まさに現在のノエル・ギャラガーの最新スタイルだ。
実は9ヵ月前、サマーソニックで来日した時も同じ最新作主体のステージだったのだが、その時より演奏は熟成度を増し、流れもスマートになっていた。この形に対するノエルやバンドの自信が伝わるパフォーマンスだった。
多くのファンが期待するオアシス・ナンバーもしっかり演奏された。ソロをスタートした時点から一貫して続けているノエルの姿勢だ。解散してソロになるとバンド時代の曲をやりたがらないアーティストは少なくない。しかし彼はどんな時もオアシス時代の曲をたくさん演奏してきた。
だからこそ彼はソロでオリジナルな世界を築き上げることができたのだ。自分の過去に対するコンプレックスがないからこそ新しい挑戦ができたのである。そして素晴らしいのは、今回のステージではオアシス・ナンバーも彼の新しいソロの音世界の中で鳴っていたことだ。ひいきの英サッカークラブ、マンチェスター・シティの優勝をファンから祝福されて嬉しそうだった。
5月15日、幕張メッセ。
(2019年5月28日日本経済新聞夕刊掲載)
日経ライブレポート「ノエル・ギャラガーズ・ハイ・フライングバーズ」
2019.05.29 13:35