日経ライブレポート「サマーソニック2019」

ポップ・ミュージック最前線のアーティストが集まり、色々なジャンルの音楽に出合えるのがサマーソニックの魅力だ。今年は20回記念で例年より1日長い3日間開催となり、出合いの機会も増えることになった。心に残るステージが書き切れないほどあった。その一部を紹介したい。

今やロック・バンドはポップ・シーンの主役とはいいがたいが、ザ・1975はそんな中でも勝ち続けている貴重な存在である。しかし彼らのステージのヴィジョンには巨大な「ロックン・ロール・イズ・デッド」の文字が映し出された。逆説的な言い方になるかもしれないが、そうしたロックに対する厳しい認識があるからこそ彼らはロック・バンドとしてシーンで勝つことができているのだろう。

とてもショーアップされたライブで、ステージ中央に設置された巨大な長方形のLEDが面白かった。およそロック・バンドのステージには似合わない、ダンス系のアクトに使われるような装置だ。それを彼らは見事に使いこなしていた。ロックであるためにはロックを対象化しなければならない。そのことにとても自覚的なライブだった。

フルームはグラミー受賞経験もあるエレクトロニック・ダンス・ミュージックの注目アーティストだ。従来型のLEDを駆使した演出だけでなく、ハンマーで物を壊してみたり、肉体にこだわったパフォーマンスが印象的だった。ブロックハンプトンはヒップホップのアーティストとしては、かなり異色の演劇的なステージ展開で、新しい表現の可能性を指し示してくれた。まさにポップ・ミュージックの今を体験できる3日間だった。

8月16~18日、ZOZOマリンスタジアム、幕張メッセなど。
(2019年9月4日日本経済新聞夕刊掲載)
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