日経ライブレポート「バッド・カンパニー」

身もフタもない事を言ってしまえばオヤジの懐メロロックである。実際、会場を埋めたのは50代を中心とした中年男性ばかり。客席の反応は熱く、代表曲ばかり演奏されたサービス・メニューに大きな合唱で応えた。
 しかし、その会場で盛りあがった50代男性の一人として言わせてもらうなら、過去に人気のあったロック・バンドの全てが、2010年にこの熱気を手に入れられるかと言えば、そうではない。むしろほとんどのバンドは忘れ去られ、時代を超えて再結成を望まれるのは極少数のバンドだけである。
 1973年に結成されたバンドは、全世界で1200万枚を超えるヒットを記録したデビュー・アルバムを筆頭に、3枚目までは全てプラチナ・ディスクを記録、素晴らしい成功を70年代に収めている。その後、メンバーチェンジや活動休止などがありシーンの最前線から遠ざかっていた。2008年、亡くなったボズ・バレルを除く3人のオリジナルメンバーによる再結成が実現。アメリカ、イギリスでのツアーは大成功、その勢いで今回の35年ぶりの来日公演となった。
 何故バッド・カンパニーは21世紀でも必要とされたのか。言うまでもなく彼らの音は時代を超えた普遍性があったから。ブルースをベースとする骨太なサウンド、シンプルだが分かり易いメロディー、70年代当時でさえ少し古臭く思えた音は、決して古びる事なく21世紀にサバイバルしたのである。既にクイーンの再結成を大成功させた、ミスター再結成ともいえるポール・ロジャースのヴォーカルは圧倒的で、再結成バンドにありがちなたそがれた裏さびしさは全くなかった。

10月26日 東京国際フォーラム

(2010年11月10日 日本経済新聞夕刊掲載)
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