日経ライブレポート「ザ・ストライプス」

アイルランド出身、平均年齢16歳のバンドである。しかもエルトン・ジョンに「彼らは僕が65年かけて蓄積したリズム&ブルースの知識を16歳にして持っているんだよ」と言わしめた、本格的なゴリゴリのブルース・ロック・バンドである。デビュー・アルバムは英国でいきなり初登場5位、日本ツアーも全て売り切れ、大きな注目と人気を集めている破格の新人だ。

アルバムでもライヴでもブルースやロックンロールの名曲のカバーが中心で、この日のライヴも「シー・シー・ライダー」や「ローリン・アンド・タンブリン」といった古典的名曲が多数演奏された。エルトン・ジョンではないが、10代とは思えないブルースやロックンロールへの理解や愛情の感じられる演奏は素晴らしく、あっという間に時間は過ぎていってしまう。

しかし所詮カバーではないか、という批判も可能である。それだけの名曲を揃えれば誰が演奏しても盛り上がると言えなくもない。やったもの勝ちのアイディア・ビジネスと言う人もいる。無論、ストライプスはそんなレベルのバンドではない。カバー主体とはいえ、オリジナル曲も半数近くある。そのクオリティーが高く、ライヴで古典と並んで演奏されても十分に拮抗するだけの力を持っている。

そしてカバーの演奏も原曲に忠実でありながら、明らかに今の時代のグルーヴを感じさせる演奏になっている。全く懐古的な臭いがない。つまり彼らがブルースをとても現代的な音楽として捉えていることが良く分かる演奏なのだ。そのことにより聞き手である我々も、改めてブルースの現代性を知ることになるのだ。

10日、Shibuya O-EAST
(2013年10月24日 日本経済新聞夕刊掲載)
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