ロッキング・オン最新号、『2020 年間ベストアルバム50』について

ロッキング・オン最新号、『2020 年間ベストアルバム50』について
2020年のベストアルバム50を選び終わって思ったのは、今の音楽シーンはある種の楽園状態にある、ということだ。
10年前、20年前、いや30年前や40年前ですら、こういうベストものを選ぶということは溢れかえるクソのような音楽をかき分けて限られた良質なアーティストや作品をピックアップすることだったのだが、どんどんそういうことではなくなってきた。
リリースされた作品の全リストを見ているだけで、これもはやベスト・アルバムのリストでも良くね?と思うぐらい、腹が立つほどの低レベルの音楽や呆れるほどの失敗作が見当たらない。ベテランの最新作も、中堅の冒険作も、新人のデビュー作も、たいてい、いい。
ちょっと大げさに大雑把に言ってるように聞こえるかもしれないが、でも、そう思いませんか?
SpotifyやAppleMusicで新譜をチェックするたびに、あれもこれも聴き込みたいのに時間が足りないことに苛立つ日々で、昔、頑張って買ったレコードやCDに外れが多くて絶望した記憶が遠のくほどだ。

つまりは、豊富な情報がみんなに行き渡ることと引き換えに常に比較や批評にさらされるこのネット社会において、評価に値しない音楽などたちまちにして淘汰されるか修正を強いられるということなのだろう。
そして、いいものがどんどん拡散されていく。

これが僕の言う、「ポップ・ミュージックの楽園状態」だ。
その楽園の中から、さらにそこにすら甘んじないぐらいのとんでもないレベルの作品が生まれてくることがあって、それは一昨年のケンドリック・ラマーだったり昨年のビリー・アイリッシュだったりする。
そういった意味ではそこまでの突出した作品は2020年にはなかったが、1位のThe 1975『仮定形に関する注釈』は、今の音楽シーンのレベルの高さを見せつける傑作であることは間違いない。フィービー・ブリジャーズのアルバムも、チャイルディッシュ・ガンビーノのアルバムも、とんでもないレベルだ。
そんなわけで、昔とは逆の意味で選ぶのに苦労した2020年のベスト・アルバム50、しっかりチェックしてください。(編集長 山崎洋一郎)
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