今月号では僕はEveとVaundyと宮本浩次のインタビューを担当しました。
巻頭特集のEveはアルバム『Under Blue』の最速インタビューなのですが、最速といってもまだアルバムが完全に完成はしていなくてEve自身もまだ客観的に語れる準備ができていないという中でのインタビューだったので、そのことで逆にとても生々しいリアルな対話になりました。
ぼくがはじめてEveにインタビューしたのは6年前でアルバム『文化』の時でした。けして言葉数が多くはないけれど、とても丁寧に、繊細に言葉を語る人だという印象でした。その頃は、Eveがメジャーな音楽シーンの中で注目が高まった時期でもあり、そのことをポジティブに受け入れながらも自分の表現には2面性があり、そこが重要なんだということをちゃんと伝えておきたいというEveの思いを僕は強く感じました。
今回のアルバム『Under Blue』は、そんなEveの表現世界が「青」のフィーリングの中で余す所なく描き尽くされた傑作です。今までで最もEveという存在そのものが伝わる作品でもあると僕は思います。
そしてもはや最近は新曲ができるたびに業務報告なみにJAPANに登場してくれるVaundyですが、今回もまた栄養たっぷりの話を聞かせてくれました。業務報告というよりもポップ研修講座ですね、もはや。
「音楽家が作るものに失敗作はないから、それをどうやって引き立てるかが大事」というVaundyのポップ理論は極論すぎて飲み込むのが難しいかもしれないが、「エジプト文明の遺跡も、駄作が残っちゃってるのかもしれないじゃないですか」と言われて「なるほど!」となる。エジプト文明の遺跡をポップ作品として捉えると、今の音楽について考えるための新たなフレームワークになる。これって本来は僕ら音楽評論家が持つ思考回路なんだけど、Vaundyは巨大な才能で創作しながら同時に鋭い分析力を同時に走らせているということなんですよね。
そして全国ツアー『今、俺の行きたい場所』の真っ最中の宮本浩次をホテルで撮影、インタビューしました。アミューズから独立して事務所を立ち上げて新たなスタートを切った宮本の現状&心境を語ってもらったのですが、そこでファンの皆さん、注目していただきたのは今回のインタビューで宮本は初めて「エレカシ」という略称を発語しました。これまではどんなに早口でまくし立てて話してるときでも必ず「エレファントカシマシ」と独自のイントネーションで発語していたのですが、今回始めて宮本自身による「エレカシ」が発語され、活字として記録されました。またもJAPANは宮本浩次の歴史の記念すべき瞬間を刻むことができました。
今回のツアーからも、新曲“close your eyes”からも、大海原に向かって船を漕ぎ出すような強い思いと漲るパッションが伝わってきました。もう35年以上、数え切れないぐらい何度もインタビューを重ねてきましたが、宮本の音楽活動に対する思いの強さ、会話の緊張感、常に未来に向かって開かれていく前向きさ、それはいっさい変わらず、いやむしろ強くなるばかりということを今回も痛いほど感じさせられる取材でした。
というわけで、そろそろCOUNTDOWN JAPANに』向けての準備も整えつつ、インタビューもとても充実していた今月でした! 来月号もよろしくね。(山崎洋一郎)
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JAPAN最新号の取材後記(Eve、Vaundy、宮本浩次)
2024.11.11 19:52