人はなぜ生きるのか、というあまりにも根本的なテーマに今作も正面から挑んでいる。
そして、文学的な曖昧さに逃げずに最後にはしっかりとその答を読者に与えて終わる。
しかも、これまで白石が何度かトライしてもどこかぎこちなく、共感を得にくかった男女の愛が今作の主題だ。長年の読者にとっても、ついに難問を解いたような達成感を感じさせてくれる。
直木賞を受賞した時、多くの審査員は白石の文章の文学的空虚さ、つまりまるで道具や手段のように文章を扱う乱暴さをマイナスポイントとして指摘していた。
だが、それは的外れな指摘である。
セックス・ピストルズに「ギターに味わい深さがない」と言うようなものである。
結論に向かって容赦なく進む性急さに読み手を着いてこさせられるかどうか、そしてその結論が言葉となった瞬間に読み手の知性と心の両方に突き刺さるかどうか。
この作家はそこに全てを賭けているのだ。
僕には、突き刺さった。