近くて遠い

The fin.『Days With Uncertainty』
2014年12月03日発売
ALBUM
The fin. Days With Uncertainty
洋楽リスナーの耳で本作を聴くと、ネオン・インディアンやトロ・イ・モワ、ウォッシュト・アウトといった、所謂チルウェイヴやネオ・ゲイズと呼ばれる同時代のアーティストたちを想起させられる。さらにはボーズ・オブ・カナダやアニマル・コレクティヴ、ディアハンターといった、よりルーツ的なネオ・サイケ&ドリーム・ポップにまで行き着くのがThe fin.のサウンドだ。ほぼボーダレスに世界とリンクした本作はまさに2010年代の産物だと感じるが、その一方で、日本ならではの距離感を感じるのも本作の面白さだ。チルウェイヴとは身も蓋もなく言えばエレポップやサイケデリックに被されたアンビエント、もやっとした霧のような曖昧の「ムード」それ自体を指すものだが、The fin.はこのムードに意外なほど縛られていない。艶やかに膨らむサイケデリックや煌めき弾むギタポのメロディを、必要とあらばムードを滅してでも彼らは突っ込んでくる。チルウェイヴも何もかもがソングライティングの一要素にすぎないドライさがある。最終曲のあっけないフェイドアウト・エンドもこのバンドっぽくて好きだ。(粉川しの)
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