失われた時との再会

ワンオートリックス・ポイント・ネヴァー『ガーデン・オブ・デリート』
発売中
ALBUM
ワンオートリックス・ポイント・ネヴァー ガーデン・オブ・デリート
前衛エレクトロニック界の次世代カリスマの最新作。看板とも言えるヒプノティックかつ抽象的なサウンドスケープはその豊かな質感の中に埋没できる「立体」だが、本作は聴き手にその内部をアクティヴに探索していく扉が数多く仕掛けられた庭園迷路だ。人工合成ヴォイス、ジャズ・フュージョンなジャム、R&Bポップ、ループやシンフォニックなノイズの滝等、現れては消えるドアノブを引っ張るたびウサギの穴に落ちる仕組み。尽きない発見に満ちた、エキサイティングなアルバムだ。

この厚みとアタックとエッジを増したサウンドについて、OPNは昨年ナイン・インチ・ネイルズの米ツアーに帯同した際に目撃したテストステロン高めのアリーナの影響をあげている。そこからグランジやメタルにハマっていた自らの思春期(本作の「狂言回し」的存在としてエズラという名の少年エイリアンが出てくるが、彼はOPNのドッペルゲンガーでもあるだろう)の心象を回顧し、再構築するに至った……というわけだが、プルーストのマドレーヌではなく、グロテスクでねじれた世界観を打ち出しているのはリアルだ。今のキッズはこれをどう聴くのだろう?(坂本麻里子)
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