たいしたことではないけれど、小さなことにつまづいて落ち込んでしまう時。些細なことで不安になって、立ちすくんでしまう時。Half Time Oldは、誰にでもあるそんな一瞬に寄り添ってくれるバンドだ。タイトなリズムにキラキラしたギターフレーズをまぶして、めまぐるしく展開するギターロック。その上で鬼頭大晴（Vo・G）の歌う言葉のひとつひとつが、軽やかに耳に飛び込んでくる。“21世紀にも鐘は鳴る”では《怒りの群衆には誰も敵いやしなくて／何を失ったんだろう》と嘆いた直後に《こんな素晴らしい世界で皆／泣いて笑って生きてるんだよ》と歌い、“Mr.パトリオット”では《世界は嘘で回っているのだ》と皮肉った直後に《世界は君を待っているのだ》と放つ。自在にネガティヴとポジティヴを行き来する言葉で翻弄するようにみせて、最後には世界をそっと肯定する。その不器用な優しさは、どんな時でも歩き出す力になってくれるだろう。ラストの“I gotta feeling”にある《永遠はないのだ》《悲しみも同じだ》のフレーズが、まるで魔法のように心を晴れやかにしてくれる。（後藤寛子）