紆余曲折の終わり

ブロック・パーティー『ヒムズ』
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ALBUM
ブロック・パーティー ヒムズ
ブロック・パーティーは不思議なバンドだ。2000年代以降のUKシーンにおいて、彼らほど試行錯誤しつつも常に一定の成功を収めてきたバンドは他にいないだろう。一本道を順調に歩いてきたとはとても言えない音楽性の変遷、迷い、葛藤、そしてメンバー間の関係性の変化にも拘らず、俯瞰して見れば確かに彼らは着実に、そして正しく前進を続けているバンドなのだから。本作もまた、そんな彼らの紆余曲折の末の正解として鳴っている。本作が正解である理由は、『インティマシー』以降の変遷、つまりギター・ロックに対する彼らのスタンスの変化の中で見ていくと分かりやすい。ギター・ロックを明らかに否定した『インティマシー』、ギター・ロックを再び取り戻した『フォー』に続き、本作はより積極的にギター・ロックを肯定するために、ギター・サウンドの可能性、創造性と真正面から取り組んだアルバムになっている。そう、反動とは無縁のポジティヴな前進作なのだ。“ザ・ラヴ・ウィズイン”のエレクトロ・ポップがシンセかと思いきや実はギターで鳴らされていた、というエピソードにも明らかなように、本作ではギターの役割が増え、結果としてギターの固定概念を逸脱した領域まで昇華されている。マットに続き昨年にはゴードンも脱退し、ついにオリジナル・メンバーはケリーとラッセルだけになった、その編成上の変化ももちろん本作には大きく影響している。ラッセルのイニシアチヴが自ずと強くなり、それが彼のギター・サウンドのヴァラエティの増加にも繋がっているからだ。(粉川しの)
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