勝負のキラーチューン

赤い公園『「Canvas」赤い公園のライブfeat.おまえら盤 〜are U ready?〜』
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SINGLE
これは名曲! 聴いた瞬間に迷わず思った。バンドサウンドの強さ、温かさと孤独が入り交じる歌詞、柔らかでタフな歌。赤い公園以外の何ものでもない楽曲だが、目下のところ赤い公園史上ベストなミッドバラードだ。歪んだギターをメインにしたバンドサウンドでスタートし、佐藤千明が程よく力を抜いた声で歌いだす。《淡い淡い気持ちが》と、リズミカルな言葉がメロディと重なって、すうっと入ってくる。抑えた歌が進むほどに感情を増し、サビではバンドと一丸となって激しく溢れ出す。構成はいたってシンプルで、曲の流れも無理がない。だからこそ歌詞がくっきり浮かび上がるのだ。抽象的に見えるけれど、色や香りや光を巧みに使って五感に寄り添い、その奥にある感情を引き寄せる。別れの季節でもある春に、自分を見つめたらこんな情景になるのではなかろうか。これまでも“風が知ってる““ひつじ屋さん”など名バラードがあるが、この曲は津野米咲のクールで繊細なセンスが素直に表われた。亀田誠治プロデュース効果だろう。カップリングもタイアップもなし、入魂の1曲。待った無しの大勝負だ。(今井智子)