その象徴とも言えるのがテーム・インパラの楽曲をカヴァーした“セイム・オール・ミステイクス”で、テーム・インパラのインディ・サイケデリアのマジックを、エレクトロニックR&Bの語法に接続させることで、今の時代の空気感を見事に共有してみせる。
いっぽうで60年代R&B的な“ラヴ・オン・ザ・ブレイン”や、70年代ニュー・ソウルの香り漂う“ジェイムス・ジョイント”といったブラック・ミュージックの歴史の厚みを感じさせるような濃厚でオーガニックなナンバーも数多く収められ、リアーナが革新者であると同時に伝統の継承者であることを示している。
この絶妙なバランス感覚こそが本作の肝。そして楽曲とまっすぐ向き合ったリアーナの歌唱力はかつてなく力強くまっすぐに聴き手の胸に届く。見事な傑作だ。(小野島大)