〔グラミー賞〕観てきました!ハイライト+米メディアの雑感。

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グラミー賞、会場のマディソン・スクエア・ガーデンで観てきました!!!

正装を義務付けられたイベントだったため、男性はブラック・タイで、女性はロング・ドレスで出席。日々スペシャルなイベントだらけのNYだけど、15年ぶりのNYでの音楽業界の最大の式典に、その盛り上がりはさすが。会場に入っただけで喉がカラカラになるようなものすごい熱気だった!!直前に発表されたのに、レッドカーペットでも、そして会場でも、#timesupを支援する白いバラをつけた人達が多かったのにも感動した。

例えばサム・スミスも。


以下グラミー賞のハイライトを駆け足でご紹介。

1)ケンドリック・ラマーの震えるようなパフォーマンスで幕開け。
映像こちら。


ケンドリック・ラマーが正に、2017年の音楽シーンの頂点と言える入魂のパフォーマンスを披露した。「アメリカ〜」と言う歌詞に合わせるように巨大スクリーンに映し出されたアメリカ国旗がなびくのを観ただけでもう震えがきた。ケンドリックはここで、アメリカの黒人に対して日常的に起きる残虐さ、人種差別を告発している。うつむいたまま、一点を見つめ、弾丸のようにその思想を吐き出していた。

軍隊を引き連れたケンドリックは“XXX.”で、どんな善良な人間でも家族を守るために必要とあらば人を殺せるのか、どれだけ悪になれるのか、という葛藤をラップする。アメリカの理想と矛盾を映し出しているのだ。そして、噂通り、U2が登場。アメリカと言うのは、“概念”なんだとエッジと一緒に登場したボノが歌う。わずか2秒に思える出演だったが、さすが世界一のロック・スター。圧倒的な存在感に会場は熱狂。そこから、“LUST.”、”DNA.”と引き続きケンドリックのラップが、心を撃ち抜いていく。

しかし緊迫感が頂点かというところで、コメディアンのデイヴ・シャペルがアメリカの人種差別を鋭いジョークで交わしたところが最高だった。「アメリカで黒人が正直になっているのを見ること以上に怖いのは、アメリカで正直な黒人になってしまうことだ」と。この日のデイヴ・シャペルは冴えまくりだった。そこから、太鼓!が登場し、さらに盛り上がる。ケンドリックが参加している、Rich The Kidの“New Freezer”へ。そしてそこから、“King’s Dead”で、「俺は誰なんだ?お前の父親じゃない。お前のブラザーじゃない。お前の理由じゃない。お前の未来じゃない。お前の安心じゃない。お前の反抗じゃない。お前の栄光でもない」とたたみかけ、そして、赤いフードを被った人達がステージで上で、一人一人銃声に合わせて倒れていった。

圧巻としか言えない幕開けで、会場は大喝采。これを超えるパフォーマンスを今日披露するのは難しいだろうと思ったと同時に、彼がアルバム賞を獲れないグラミー賞ってあり得るのか、とすら思った。

2)ケシャ。#metoo, #timesup を一身に背負う感動のパフォーマンスで、間違いなくハイライト。
現在のアメリカに絶対に無視できないムーブメントは、“Black Lives Matter”と、”Metoo”や、”Timesup”に代表される女性の権利を訴えるムーブメントだ。ゴールデン・グローブ賞での女性の団結が示された後、グラミー賞がいかに女性の団結を示すのかと思ったら、それをケシャが一身に背負っていた。

こちら映像。


シンディ・ローパー、カミラ・カベロ、アンドラ・デイ、ジュリア・マイケルズも参加し、会場も総立ちとなった。プレゼンターとして登場したジャネル・モネイのスピーチも、音楽産業において、女性がリアルな意味でどれだけ重要なのかを訴え、平等の権利のために団結するという内容で、人々のインスピレーションとなると絶賛された。

3)リアーナ、カーディ・B、ブルーノ・マーズが、ポップの威力を。


リアーナが、DJキャレドと登場し“Wild Thoughts”を披露。彼女が登場して、さすが、即会場が総立ち。南アフリカのGwara Gwaraダンスを披露した瞬間会場全体が悩殺されたようだった。映像はこれ。翌日も最大の話題の一つとなっていた。


2017年の代表するメジャー・シーンのクイーンと言ったらもう一人。チャートで記録を達成したカーディ・B。彼女がソロでパフォーマンスするべきだったという声も多かったが、この日賞を独占したブルーノ・マーズとのコラボ曲”Finesse”で出演。映像はこちら。


MVと同様に“In Living Color”を彷彿させる文字通りカラフルなパフォーマンス。ちょうど式典の中頃で、会場の空気が重苦しくならないような鮮やかな演出は、観客を楽しく盛り上げた。

4)トランプ批判。
この日、一つのテーマだったのは、トランプ批判。U2ロジックが、トランプがアフリカとハイチに対して言ったアメリカで放送禁止用語である”Sxxxxxxxx”という歌詞を曲で歌って抗議。私は会場にいたので、ロジックがその言葉を言った瞬間、会場が全体が大喜びしているのがわかった。放送ではセンサーされていた。ロジックはその歌詞をその後、ツイートしている。


ロジックは「君たちは、Sxxxxxxxxなんかじゃない!」と言ったのだ。

ちなみに、これは亡くなった人達の追悼に続いてのパフォーマンス。最後にチェスターの声が会場に響いた後、“1-800-273-8255”という自殺防止のためのホットラインの電話番号を掲げたこの曲で、ロジックがしばらくチェスターの写真に向かって歌っていたのがグっときた。

映像はこちら。


さらにトランプの移民政策に反対するために、U2は自由の女神を背に演奏。ハドソン川でこれは事前に収録されたそうだ。ボノは“Get Out of Your Own Way”の中で、「反発するんだ」「自由の女神の顔にヒビが入り始めている」と歌った後、最後に、ロジックと同じく”Sxxxxxxx”という言葉を使い。「神の恵みは、(トランプが)Sxxxxxxと呼んだ国々に。なぜなら、彼らこそが、アメリカン・ドリームをくれたのだから」とアメリカの国旗が描かれたメガフォンで叫んだ。

映像はこちら。


そのパフォーマンスの前にカミラ・カベロが登場し、トランプが違法にアメリカに来た親の元で生まれた子供たち(ドリーマー達)を親の祖国へ帰そうとする、DACA政策の撤回に反対するメッセージを投げかけた。

映像こちら。


3人の写真。


しかしトランプ批判としては最高に笑ったのが、物議を醸し出しているトランプの暴露本をカーディ・Bと、なんと言ってもヒラリー・クリントンが読み上げたこと。会場はこの日最大の爆笑となっていた。

映像こちら。


5)ネット上での人気/不人気。

ちなみに、笑いと言えば、評判が悪かったのは「カープール・カラオケ」の代わりに「地下鉄カラオケ」をやったこと。私は笑っちゃったのだけど、ネット上での評判は悪かったそう。スティングと、シャギーが登場。

映像はこちら。


またネット上で最大の人気となったのは、ビヨンセ、ブルー・アイビー、JAY-Z親子だったそうだ。誰もステージに上がらなかったのに!JAY-Zは最多ノミネートで一つも獲らなかった。今思えば、パフォーマンスをオファーされたのに断った理由はそれかも?NYでの開催で、前日にはアイコン賞も受賞したんだから、JAY-Zがヒット曲をダイジェストで演奏する場面を作ってあげるべきだったという声も多い。ネットで、大きな話題となったのは、ブルー・アイビーが、お母さんとお父さんに拍手がうるさいです、という場面。かわいい。

https://www.instagram.com/p/BehJCnlgyBV/?hl=en
https://www.instagram.com/p/BehBlrsA2Fb/?hl=en

6)破格の新人シザ。
新人でありながら女性として最多の5部門にノミネートされたシザは、この日“Broken Clocks”を披露。その破格の才能を見せつけていた。彼女の周りにはセーターを着たダンサー達が登場。自分の部屋で語るような正直で赤裸々とも言えるコメントをあまりにカジュアルにこともなげにサウンドに乗せて告白してみせる斬新さ。彼女の佇まい、衣装、ダンス、なども含め総合的に今最も女の子達の心に突き刺さり、クールな存在であることをこの日も証明していた。彼女が新人賞を獲らなかったため、ファンがネットで炎上。受賞したアレッシア・カーラがなぜ自分は新人賞をもらう価値があるのかを自ら書いて発表するという少しかわいそうなことになっていた。アメリカの批評家も、最初から、ほぼ全員シザが獲るべきとしながらも、グラミー賞の体制を考慮しアレッシアが獲るだろうと予測していた。


7)『ライオンキング』の子供と出演で大サプライズ!!!
この大舞台で、最も安パイなことをしなかった人は、チャイルディッシュ・ガンビーノだろう!誰もが知ってる大ヒット曲“Redbone”をやるのだと思ったら、会場の多くの人が知らないだろう“Terrified”をやったのだ!大サプライズ。しかしそのおかげで、会場が聴き入ってしまうという、ものすごい勇敢な選択。自信と目的のある人にしかできなことだ。さらに、最後にこれから彼が出演する『ライオンキング』でドナルド・グローバーが演じるシンバの子ども時代を演じるJD McCraryが出演し、彼が素晴らしいパフォマーンスを披露するという大きな宣伝にも!アメリカの放送では、そのあと続けてアップルのコマーシャルになりそこで“Redbone”が流れたというからうまくできすぎている。賢い!!!

映像こちら。
https://www.grammy.com/grammys/videos/childish-gambino-terrified-performance-2018-grammys

8)米メディアの総評。

アメリカのメディアは、誰もが当初からケンドリック・ラマーがアルバム賞を獲るべきとしながらも、獲らないだろうと予想していた。結局そうなったという結果に、「グラミー賞はグラミー賞のままだ」と失望しているところが多かった。「The New York Times」紙などは、「グラミー賞は始まった当初から、チャック・ベリーがギターをかき鳴らしている時に、フランク・シナトラにアルバム賞をあげたくらいだから、とにかくその年最も伝統的な音を鳴らしているアーティストがアルバム賞を獲る。さらにオリジナリティは評価しない。そして生の楽器を鳴らしている方が評価される」という傾向が60年の歴史で変わらないのだ、と書いていた。今年少しだけ変わるかもという期待が持たれたのは、90年代以来初めて、白人男性がアルバム賞にノミネートされないということがあったからだ。また、アカデミー賞などが、「白すぎる」という批判を受けて、変わりだしたことに刺激されて変わるのでは、と期待されていたのだ。

人種差別や移民への愛を、女性アーティストの権利などを訴える力強いパフォーマンスを軸にしながらも、主要部門ではケンドリックも獲らず、“Despacito”も獲らず、ロードはパフォーマンスを披露しなかったため、グラミー賞の古い体制に引き続きの怒りを表すメディアが多い。「Pitchfork」はトランプの言った言葉使って、「グラミー賞は再びSxxxxxxxだった」と書き、「The New York Times」紙は、「グラミー賞は果たして修復可能なのか?」と書いていた。

多くのメディアは、ブルーノ・マーズとマーズのファンに特に異議があるわけでは全くないのだが、と最初に断っていたのも特徴的だったと言えると思う。

ただ、USインディロックのご意見番と言えるフリート・フォクシーズのロビンが、インスタストーリーでブルーノ・マーズを「トイザラス・ギャップバンドに主要部門を全部あげるのはおかしい」と言っていた。この発言も話題となっていた。ブルーノ・マーズは、実際“Uptown Funk”のクレジットにThe Gap Bandを加えている。「俺に言わせたら、ケンドリックと、シザと、JAY-Z以外に良い作品はなかったと思う」と。「アルバム賞にノミネートされたアルバムは全部良いと思っていて、ただし1枚だけ凡庸だと思っていた。それが賞を獲った。俺は怒ってるわけじゃないんだ。がっかりしただけだ」と。ただ、ザ・ウォー・オン・ドラッグスがオルタナアルバム賞を受賞したことは嬉しかったようだ。

また、同じくUSインディシーンのご意見番であるボン・イヴェールもツイートを連投。「マーズには何の文句もない。だけど、この結果はマジでクソだ」と。
https://pitchfork.com/news/fleet-foxes-robin-pecknold-burns-bruno-mars-over-grammy-wins/

私も個人的に、ブルーノ・マーズに何の文句もない。しかし、ヒップホップが60年の歴史の中で2度しかアルバム賞を獲ったことがないという中、今年、ケンドリックは最高といえるアルバムを作った。『トゥ・ピンプ・ア・バタフライ』の時は、テイラー・スウィフトの『1989』がアルバム賞を獲った。『グッド・キッド、マッド・シティー』の時は新人賞で、マックルモアーとライアン・ルイスに敗れているいる。マックルモアーはそれ以来グラミー賞にアルバムを提出していない。そういう経緯があり、『ダム』は2017年、最も評価の高いアルバムであり、売り上げにおいてもケンドリックは、274万枚で、ブルーノの227万枚より上だ。それでも獲れなかったという体制を目の当たりにして、発表の後言葉を失い、うなだれて帰って来た。ただし音楽の本当の力を見せつける数々の感動的なパフォーマンスを15年ぶりに行われたNYで生で観られたことには、感謝の気持ちで一杯だった。一生に一度という経験だったと思う。
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