2007年以降にリリースされたシングルのカップリングに、限定販売商品、新録楽曲を加えた全22曲収録のBサイド集。改めて、the pillowsの楽曲が放つどうしようもない心地好さを再確認させられる。オルタナサウンドで駆け抜けるアッパーな曲も、流麗なアルペジオが映え、音の隙間まで美味しいメロウなナンバーも、等しく美しい。力強いながらも聴く者をどこかセンチメンタルな気分にさせる山中さわお（Vo・G）の声と、初めて聴いた時でも、まるで昔から傍らにあったかのように自然となじむメロディの磁力の強さ。そして、それを最も浸透力が高い状態で鳴らすことができるバンドの成熟度が、楽曲の世界へ引きずり込み、どっぷりと浸からせる。

中でも、アニメ『スケットダンス』に提供した曲のセルフカヴァー“世界は屋上で見渡せた”の一節《今しかない感情は／火傷するほど不器用だけど／二度と戻れないんだ》にはやられてしまった。最も曖昧で、時が経つほど愛おしくなる思春期の一瞬の煌めきが鮮やかに蘇る。結成から27年。バンドの地肩の強さを思い知らされる作品。（齋藤毅）