これまで自身のほぼ全ての楽曲において作詞作曲を手がけてきた安藤裕子が、様々なアーティストから楽曲提供してもらい、シンガーに徹する今作『頂き物』。峯田和伸が曲を手がけ、コーラスでも参加した“骨”では《きもいね。しゃあないね。》なんて峯田節全開の歌詞に古き良き歌謡曲のようなデュエットが妙に泣ける。安藤が赤身のステーキをよく食べるという話を聞き、DJみそしるとMCごはんが書き上げた“霜降り紅白歌合戦”ではラップにも挑戦。Charaがサウンドプロデュースまで手がけた“やさしいだけじゃ聴こえない”でも、しっかりとその世界の中で自身の歌を残した。かつてオーディションでもCharaの曲を歌い、多大な影響を受けてきたアーティストの音楽に飛び込むことは勇気が要ることだと思うが今だからできたのだろう。今作はオムニバス的な魅力だけでなく、命の誕生を歌う“Touch me when the world ends”のあと、喪失を歌う“Last Eye”へ続くなど、ひとつの物語としても味わえる。豪華メンツの美味しい頂きに触れる安藤裕子の度量と、さらに広がりを見せる表現が聴きどころ。（上野三樹）