今回はオリジナルの3人に加え、ギター×2名、シンセ×1名のサポートが加わった6人編成のThe Flickers。音数がすごく増えたとか、音を厚くするためにとか、そういう方向での増員ではないことはアルバムを一聴すればすぐにわかる。3人だけでは表現できなかった音の広がりを求めた結果、ポップさと激情が生み出すコントラストがより鮮やかになっている。甘く静かなギターと抑揚を抑えたヴォーカルで、失った何か（誰か）を思う“no name”はエンディングに向けて轟音ギターノイズが喪失の痛みを搔き消すように鳴らされ、オープニングにふさわしい1曲。“new romantics”では《愛を探しに行こうぜベイビー》というシンプルな言葉が、疾走感あふれるエレポップの中で叫ばれ、歌の凄みとメロディのスウィートさの共存に心奪われる。そして“hell diva”は東洋音階にファンキーなリズムを交えた超絶ダンサブルな名曲。これはまさに今回の編成だからこそ生まれた音だろう、アウトロのギターとシンセの絡みが圧倒的！ 儚くも力強い全10曲、現在進行形で進化を続けるバンドの「今」を体感せよ。（杉浦美恵）