熟成

ザ・キルズ『アッシュ・アンド・アイス』
発売中
ALBUM
ザ・キルズ アッシュ・アンド・アイス
前作『ブラッド・プレッシャーズ』は、とにかく冒頭の“フューチャー・スターツ・スロウ”が大好きになってしまい、もちろん以降の曲も含めてお気に入りのアルバムだった。初期から強固に確立していたキルズのスタイルはそのままに、サウンド面で深みがグッと増していたと思う。

そして、ジェイミーが手を故障していたこともあり5年ぶりとなった新作も、変わらずカッコいい。今回は共同プロデューサーにジョン・オマホニーを起用、ニューヨークのエレクトリック・レディ・スタジオにてレコーディングを行なうなど制作環境も変えたそうで、自分たちの表現をさらに磨き上げようと試みた様子が窺える。ローファイなガレージ感は魅力的な持ち味として残しながら、ただチープさを逆手にとったような手法にはなっていない。

また、深化したのはサウンド・プロダクション面だけでなく、ギター伴奏のみの“ハム・フォー・ユア・バズ”や、ピアノ伴奏のみの“ザット・ラヴ”などでは、アリソンが特に素晴らしい歌を聴かせてくれる。ザ・デッド・ウェザーに参加して経験値を上げたことなども関係しているのだろう。ぜひ聴いてほしい1枚だ。(鈴木喜之)
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