ロックンロールの芯とは

ザ・キルズ『リトル・バスターズ』
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ALBUM
ザ・キルズ リトル・バスターズ

Bサイド&レア音源の全20曲をリマスターして収録したコンピレーション・アルバム。時期としては、初作となる『Black Rooster EP』をリリースした2002年から、2008年の3rdアルバム『ミッドナイト・ブーム』リリース後の2009年に至るまでに制作された楽曲が収められている。つまり、キルズの「表」が世に広まっていった頃、「裏」ではどんな楽曲が生み出されていたのか?を今一度知ることができる作品なのだ。

脈々と続いてきたガレージ・ロックやブルースに影響を受けたバンドたちが、次々と華やかな舞台へと飛び出しては、紆余曲折の道のりをたどっていった2000年代。寡作であるキルズも、そのうちのひとつと捉えられるのかもしれないが、こんなにも芯の変わらない――つまり、最初から「一番尖っていて、一番艶やかなロックンロールって、未来永劫こういうものでしょ?」という信念で続けているバンドは、他にはいないのではないだろうか。10年以上も前の楽曲なのに、懐かしい感慨よりも、ヒリヒリとした刺激が耳に残る今作を聴いて、改めてそう思った。

彼らのルーツを探れるカバー・ソングが聴けるところも、今作の大きな魅力。セルジュ・ゲンスブールの“I Call It Art”、ハウリン・ウルフの“Forty Four”、スクリーミング・ジェイ・ホーキンスの“I Put A Spell on You”、そしてドック・ボッグスの“Sugar Baby”。何十年もそのまんまになっていた宝の山を掘り起こして、ひとつひとつていねいに磨き上げ……すぎて彼らだけの鋭利な形を作り上げたような、眩しいカバーばかりだ。もちろん原曲の色は残っていて、彼ららしいリスペクトを感じることができるし、先述したロックンロールの不変の芯も浮き彫りになっている。(高橋美穂)



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ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』2月号に掲載中です。
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ザ・キルズ リトル・バスターズ - 『rockin'on』2021年2月号『rockin'on』2021年2月号
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