痛みを越え、大いなる成長へ

ジェイムス・ブレイク『ザ・カラー・イン・エニシング』
2016年06月24日発売
ALBUM
ジェイムス・ブレイク ザ・カラー・イン・エニシング
ビヨンセ、レディオヘッドと話題作の不意打ち投下が続いたが、前者のアルバムに楽曲提供していたジェイムス・ブレイクも遂に3rdを発表。

過去2作とは異なり、17曲/76分強の尺にまず驚く。基本的にバラード系で音楽的にもミニマルなアクトなので、聴き手の集中力を要するこの構成はリスキーでもある(トーンの変化に乏しい冒頭4曲を通して聴くのは非ファンにはタフかもしれないし、前作収録の“レトログレード”型の掴みのいい曲も決して多くない)。が、逆に言えばこの長さだからこそ精密に分断・加工されたエレクトロ、クラシック/宗教音楽/フォーク、ディスコ〜モダンR&Bに至る彼に内在する幅広い要素を一望し、そのユニークなミックスぶりをじっくり堪能することができる。恋人との破局とそれに続く内省〜受け入れを丹念に綴った歌詞でエモーショナルな背骨を通すことで、大作でありながらパーソナルな深みを伴う内容になっているのも見事だ。M7、M10、M14といった新鮮な味の楽曲も含むものの、これは「現時点までの歩みを総括したアルバム」だろう。次なるステップに期待しつつ、まずはこの豊かな実りを楽しもうと思う。(坂本麻里子)
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