ブルーノート75周年イヴェントでジャズ界の新旧大御所と共演したことをきっかけに、ファースト・アルバム以来久々にピアノでの作曲を開始。ウェイン・ショーターやロニー・スミスといったジャズ畑の多彩なゲストを招いて制作された。
ノラによるピアノ弾き語りがベースにあって、そこに必要最低限のアレンジ/バッキングを加えていったことがわかる、シンプルで奥行きのある演奏と音像。恐らくはポスト・プロダクションもほとんど加えられていない生成りの楽曲は、だからこそアーティストの力量がとことん試される。アレンジの基本はジャズで、そこから世界観としてのロックやソウル、ゴスペルやカントリーなどアメリカン・ミュージックの総体が立ち上ってくる見事な構築力。表現のレヴェルが高くて深い。ゆったりとした余裕を感じさせながらピリリと引き締まった緊張感も漂わせる。久々にノラの本気を聴いた。(小野島大)