メタル修験者の存在証明

メタリカ『ハードワイアード...トゥ・セルフディストラクト[デラックス]』
発売中
ALBUM
メタリカ ハードワイアード...トゥ・セルフディストラクト[デラックス]
13年の映画『メタリカ・スルー・ザ・ネヴァー』公開&サントラ(=ライヴ盤)を挟みつつ、『デス・マグネティック』以来実に8年振りとなる新作はトータル80分、本編だけでCD2枚組の力作。全12曲中“ハードワイアード”、“アトラス、ライズ!”、“モス・イントゥ・フレーム”、“スピット・アウト・ザ・ボーン”の4曲以外はミドル~スロウ・テンポのナンバー、という重厚な構成からくる驚きを、呪術的な妖力に満ちたリフ・ワーク&メロディで堂々と凌駕しながら、黒に黒を塗り重ねていくような凄絶なヘヴィネスを体現しているのが印象的だ。

前作のミックス・エンジニア=グレッグ・フィデルマンをプロデューサーに起用。ソリッドかつダーティな激走感に満ちた“ハードワイアード”でも、メタル・プログレ的な展開の多様性を見せる“ヘイロー・オン・ファイヤー”でも、ラーズのリズムの生々しさ、質実剛健なギターの硬質な響きにくっきりとフォーカスを合わせてみせる。重轟音や加速度の限界を競うエクストリームな視線ではなく、剥き身でも強靭な己のアンサンブルの核心だけをさらに鍛錬し磨き上げてみせた、メタル修験者の存在証明的な作品。(高橋智樹)
公式SNSアカウントをフォローする

人気記事

最新ブログ

フォローする