彼女の現行スローガン「すっぴん主義」を地でいく素顔+アフロの白黒ジャケ写、「(今)ここ」のタイトルも含めて、リアルは本作の鍵であり、加工しないヴォーカルも生々しい。ニューヨークっ子としての矜持M3や、母/妻としての心情を歌ったM9、M10は、パーソナルな楽曲と言える。しかし、間奏として配置された多彩な会話群(ソランジュ作でも効果的だった)を踏み板に、若い女性の陥る様々な落とし穴、環境問題への警告、ドラッグの闇、LGBTへのシンパシー等、様々な声を分け隔てなく代弁していく。定番と言える情感豊かなピアノ・バラッドの名曲M17や、トロピカルな新味M18といった先行曲が漏れている(いずれもDX盤収録)のは意外かつもったいなくもあるが、この決断はジャズ/ソウル/ヒップホップ/エレクトロを自在に横断する力量を持つ彼女が、メッセージという熱を担う「語り部」として目覚め、作家性を打ち出した証しではないか?とも思う。ここから何が動き出すか、期待が募る。(坂本麻里子)
本格覚醒の1枚
アリシア・キーズ『ヒアー』
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ALBUM
彼女の現行スローガン「すっぴん主義」を地でいく素顔+アフロの白黒ジャケ写、「(今)ここ」のタイトルも含めて、リアルは本作の鍵であり、加工しないヴォーカルも生々しい。ニューヨークっ子としての矜持M3や、母/妻としての心情を歌ったM9、M10は、パーソナルな楽曲と言える。しかし、間奏として配置された多彩な会話群(ソランジュ作でも効果的だった)を踏み板に、若い女性の陥る様々な落とし穴、環境問題への警告、ドラッグの闇、LGBTへのシンパシー等、様々な声を分け隔てなく代弁していく。定番と言える情感豊かなピアノ・バラッドの名曲M17や、トロピカルな新味M18といった先行曲が漏れている(いずれもDX盤収録)のは意外かつもったいなくもあるが、この決断はジャズ/ソウル/ヒップホップ/エレクトロを自在に横断する力量を持つ彼女が、メッセージという熱を担う「語り部」として目覚め、作家性を打ち出した証しではないか?とも思う。ここから何が動き出すか、期待が募る。(坂本麻里子)