「これが本当にあのピジョン・ディテクティヴズ?!」と驚かされる4年ぶりの新作。約10年前、ポスト・リバティーンズとでも称すべきアンセミックなガレージ・ポップを鳴らし登場した彼らの過去を思えばまさに激変、一聴して気まぐれな手さばきでかき乱しているようで、俯瞰すると美しい放射線を描いているギター・リフといい、広大な空間をたゆたうリヴァーブといい、緻密と即興がせめぎ合うスリリングな展開といい、ポスト・パンク的アヴァンギャルドに大きく振り切れたのが本作だ。クラフトワークやニュー・オーダーばりのシンセ使いも躊躇いなくチャレンジするなど、この彼らの鮮やかな新章を導いたのがプロデューサーのリチャード・フォームビー。近年ではワイルド・ビースツとの仕事等で知られる彼だが、もともとジャズ・ブッチャーやダコタ・スイートのメンバーとして音響派サイケ~ノイズ~サッドコアの最前線にいた人物だ。この明快なグルの人選からも、彼ら自らが望んだ変化だったのは明らかだ。かつてのパンクの初期衝動を封印し、フォールズやエルボーのような革新と求道のロックを選んだ、その決意をまずは評価したい一作。(粉川しの)