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どのような想いも「曲」という世界の中では自由に解放することができる。特殊な感情もキャッチーに輝けるのが「音楽」だ。“君に聞きたいひとつのこと”は、まさしくこれに当てはまる。《君が普段どんな音楽聴くのか/突然聞いたら気持ち悪いかな》と歌っていることが示す通り、歌っている感情はかなりどうかしている。好きで堪らない対象に特殊な質問をしたくて堪らない衝動は、歌詞の言葉を借りてダイレクトに表現するならば非常に気持ち悪い。しかし、そもそも相手の了承もなしに一方的に好きになること自体が気持ち悪さの塊であり、成就していない恋を描いたラブソングは気持ち悪さから決して逃れることができない。メロディの温かさの中に情緒不安定の気配も渦巻かせるこの曲は、魅力的な歌声とグルーヴィーな演奏で彩りながら不格好な感情を堂々と躍動させて、リスナーの胸の内にもあるのかもしれない同様の想いとシンクロする。SHISHAMO流のひとひねりを加えつつも、恋の本質を捉えた直球ラブソングだ。(田中大)(『ROCKIN'ON JAPAN』2025年9月号より)
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