この2月に『フューチャー』と本作を2週連続でリリースし、両方でUSチャート1位を奪取してしまった。『フューチャー』はサウスサイドやゼイトーヴェンら同郷アトランタのプロデューサー陣が深く関わった、王道にして尖りまくった南部トラップ作。一方の『HNDRXX』は、キャッチーなフックが数多く仕掛けられ、ザ・ウィークエンドやリアーナともデュエットを繰り広げるという、極めてオープンでポップな作風になった。2枚のタイトルを並べると「未来のヘンドリックス」ということになる。その思惑通り、『HNDRXX』はヒップホップ・ファン以外のリスナー層にも広く訴えかけるアルバムと言えるだろう。〈俺の人生をぶち壊しにしないでくれ〉と痛ましいメロディで歌い上げる“ダメージ”や、幻想的なエレクトロのリフレインの中から届けられる“テスティファイ”といったナンバーもいちいち泣ける。タフなストリート感覚を描く『フューチャー』と泣き節がズラリと並ぶ『HNDRXX』という産み分けも巧妙で、一面的なマッチョのイメージを回避している。これまでも多作家ではあったけれど、今回の戦略には心底脱帽だ。(小池宏和)