たった今、景色を変える1枚
スカート『20/20』
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これはすごい。2017年の傑作のひとつとして記憶されることは間違いない、メジャーデビューアルバムである。個人的には昨年、カクバリズムからリリースされた『CALL』で初めて触れたアーティストなのだが、かつて学生時代の澤部渡のソロプロジェクトとしてスタートし10年余(現在はサポートメンバーを迎えたバンド編成)、本作はその入り組んだポップセンスが満を持して咲き乱れるような1枚である。前作『CALL』は夜のイメージが広がる視界を持っていたけれど、この新作では鴨田潤の小説を通して孫引きされたというザ・ビーチ・ボーイズのアルバムタイトル『20/20』からも窺えるように、とても晴れやかで開放的、しかしどこか病的なエロスとフェティシズムを内包したシティポップ作となった。まさに視界良好である。内面に抱え込んだ生き難さもまるごと肯定する、論理的でしなやかなポジティビティが音像にも表れている。順風満帆ではありえない暮らしに足を取られながらも、力強い推進力をもってグルーヴしてゆく“手の鳴る方へ急げ”など、一枚岩となったバンド演奏もキラリと光る。(小池宏和)