これは大傑作! キラキラ輝くようなシンセのコードに心が舞い上がり、まさかのSAXソロに涙する異形のエレポップM1から、全篇にわたって極上のメロディーが吹き荒れる。前作、前々作と60sのB級ガレージ・ロックをリミックスしたかのような、サイケデリックの迷宮からマニアックな音を放っていたMGMTだったが、ここに来てカラフルでキャッチーな旋律と、まさかのメジャー感を伴ってポップ・シーンへの復活だ。このワクワクする感覚どこかで……と思いだしたのが、今作にも関わるプロデューサー、デイヴ・フリッドマンが約20年前に手がけたフレーミング・リップス『ザ・ソフト・ブレティン』。とことんポップでありながら歪みまくっている今作が与える衝撃は、あの名盤に勝るとも劣らない。もう1人のプロデューサーはパトリック・ウィンバリー。元チェアリフトの彼による功績なのか、特にベースをはじめとするシンセサイザーの音色が素晴らしい。その美麗なサウンドとメロディーはプリファブ・スプラウト、ザ・コーギス、ニュー・オーダーといった80sUKエレポップの名曲を聴いているような気持ちになるほど。このアルバムが大ヒットしたなら痛快だ。(片寄明人)