音楽を更新する「景色」と「物語」

SEKAI NO OWARI『Tarkus』
2018年03月07日発売
「炎と森のカーニバル」、「Twilight City」、「The Dinner」といったコンセプチュアルなライブエンターテインメント越しに、音楽の価値と在り方をアップデートしてきたセカオワが、昨年1〜2月に行った初のドーム・スタジアムツアー「Tarkus」の映像作品化。巨大樹のセンターステージと、それを4方向から取り囲む森の動物たち、客席上空を泳ぐ巨大バルーンのクジラといった演劇あるいはミュージカル的な舞台設定の特異性はもちろんのこと、ライブを何より特別なものにしていたのは、このアクトが備えていた物語性そのものだ。動物の語り部たちが伝える、正義と悪とが分かち難く入り乱れている「ふたつの視点の悲劇」の中にSEKAI NO OWARIの楽曲群が配置されることで、“スターライトパレード”や“Never Ending World”、“眠り姫”から“SOS”、“Hey Ho”までマスターピースの数々がまったく新しい手触りと意味を獲得していく光景は、それ自体が壮大なポップマジックそのものだ。この流れの中だからこそ体験し得る途方もない感動と祝祭感が、本編最後の“Dragon Night”には満ちあふれている。(高橋智樹)