夏にまつわるエトセトラ

KANA-BOON『アスター』
2018年05月30日発売
MINI ALBUM
KANA-BOON アスター
熱い躍動感と瑞々しいメロディを融合させることに長けているこのバンドが醸し出す空気感は、生命力に満ち溢れている季節なのに、どことなく胸がキュンキュンする瞬間も度々訪れる夏のイメージに近い。花言葉が「追憶」、「信じる恋」、「変化」であるアスターをモチーフに据えて、夏の5篇の恋模様を映し出す今作が我々に届けるのも、まさにそういう感触だ。狭いベランダで儚い光を見つめている青年が思い浮かぶ“線香花火”、恍惚と切なさの併せ技で踊らせる“アスター”など、どの曲も味わい深いが、コアなファンが「おっ!」となりそうなのが、“彷徨う日々とファンファーレ”。この曲に出てくる《甘い夜と自販機のライト》という一節を聴いたら、1stフルアルバム『DOPPEL』に収録されていた“羽虫と自販機”を思い出すのではないだろうか。ソングライターの谷口鮪(Vo・G)にとって、夜道に淡い光を投げかける自販機は、心の内奥をくすぐられる存在なのかもしれない。何気ない素朴なものに深いドラマを見出す彼の気質が、KANA-BOONが帯びている甘酸っぱい夏感に繋がっている気がする。(田中大)
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