チャットモンチーをこの作品で終わらせるという使命と責任を全うする――そんな緊張感が心地よく漂う。彼女たちは凛とした姿勢のまま、こんな風に進化することがあらかじめ決まっていたような潔さで最終形態としてのチャットモンチーを鳴らしている。全編打ち込みのメカスタイルで“たったさっきから3000年までの話”では福岡晃子がトラックを手掛ける高速ビートがスペイシーに駆け巡る中で橋本絵莉子が高らかに吠える。“クッキング・ララ feat.DJみそしるとMCごはん”におけるコラボや、橋本が自身の息子と一緒に歌う渾身のメッセージソング“びろうど”など最後だからこそ自由に表現できている印象も。大事なものしか詰まっていない作品であるが、何より、高橋久美子が作詞を手掛けた“砂鉄”は彼女たちが本気で音楽と向き合った青春と友情を綴った大切な手紙だ。チャットモンチーを愛した私たちとの絆の物語だ。デビュー当時だったらきっと、もっとBPMの速い疾走感溢れる曲になったかな。今はゆったりとしたリズムが確かな想いを届ける。チャットモンチーに会えて嬉しかった。（上野三樹）