理想のアメリカを音にする

レイ・デイヴィス『アワ・カントリー:アメリカーナ第二幕』
発売中
ALBUM
レイ・デイヴィス アワ・カントリー:アメリカーナ第二幕

10年ぶりのオリジナル・スタジオ・アルバムであった昨年の『アメリカーナ』の続編が早くも届いた。前作発表時、レイは10年の間に100曲以上を録りためており、すぐに残りの曲から第2弾を作ると語っていたが、約1年でその通り実現してとても嬉しい。レイはさらに、この『アメリカーナ』2部作を基にした舞台と映画の製作にも取り掛かっているという。しかしながら、イギリスの音楽家の代表のようなレイにとってアメリカとは何を意味するのか。何がそこまで重要なのか。はっきり言ってしまうと、アルバムの中にその答えはない。アメリカのルーツ音楽に傾倒しているわけでも、アメリカにまつわる物語ばかりが描かれているわけでもない。ここにあるのは正しくレイ印のグッド・メロディと、今を生きる市井の人々の物語である。つまり、サイケ全盛の60年代末に田舎暮らしが恋しいと歌った『ヴィレッジ・グリーン〜』やスワンプ・ロックを取り入れ「イギリスから夢想するアメリカ」を描いた『マスウェル・ヒルビリーズ』などと同じく、ただ「ここではないどこか」を求める上でのテーマが「アメリカーナ」となったということなのだろう。彼のライブを観た人ならば皆同意してくれると思うが、レイ・デイヴィスは変人である。常に落ち着きがなく、不規則な行動ばかりを繰り返している。そんな彼だからこそ、誰からも理解されない自分の頭の中を伝えるために誰より美しいメロディを、誰もに当てはまる優れた物語を、死ぬ気で紡いできたのだ。しかし、それでも足りない、伝わらないという悔しさが、彼に「どこかにあるはずの自分の居場所」を想わせるのだろう。兎も角、稀代の音楽家が描く理想のアメリカ、その音楽の素晴らしさにはまたしても息をのむばかりである。(長瀬昇)



『アワ・カントリー:アメリカーナ第二幕』の詳細はSony Music Entertainment (Japan)の公式サイトをご確認下さい。

レイ・デイヴィス『アワ・カントリー:アメリカーナ第二幕』のディスク・レビューは現在発売中の「ロッキング・オン」8月号に掲載中です。
ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。


レイ・デイヴィス アワ・カントリー:アメリカーナ第二幕 - 『rockin'on』2018年8月号『rockin'on』2018年8月号
公式SNSアカウントをフォローする

最新ブログ

フォローする