傑作の内容を時系列順に聴く

ケンドリック・ラマー『ダム (コレクターズ・エディション)』
発売中
ALBUM
ケンドリック・ラマー ダム (コレクターズ・エディション)

フジロック出演記念として日本盤がリリースされたケンドリック・ラマーの『ダム』のコレクターズ・エディション。オリジナル盤との違いは曲順が最初から最後まですべて逆になっているだけなのだが、曲順を逆にすると“ダックワース”が冒頭に。実はこの曲が本アルバムの核心で、それを最初に聴くことになる。ケンドリックは犯罪が横行するコンプトンでの生い立ちをこれまで何度も作品化してきたが、『ダム』ではそんな犯罪都市で、さらに被差別と格差を強いられながら、この先どう生きて行けばいいのかというテーマに向き合っている。そして、そのテーマはこの“ダックワース”に行き着くのだ。

この曲はシカゴからコンプトンに移住したばかりのケンドリックの父ダックワースとケンドリックの現在のレーベル・オーナーのアンソニー・ティフィスについて綴ったものだ。ふたりは実は数十年前に対峙したことがあり、堅気になったダックワースはケンタッキーの従業員として働いており、そこに強盗として押し入ったのが当時まだストリート・ギャングだったティフィスだった。どちら側にも犠牲者を出したくなかったダックワースは事態の収拾を図り、ティフィスに次回から来店したら必ずチキンを1ピース提供するから今日のところは強盗はやめてくれと説得したという。場合によっては撃ち合いになって父親が死に、いずれ自分もストリート犯罪で死んだかもしれないとケンドリックは猛烈なフロウで綴り、よかれと思える行為を勇気をもってやらないと、なにも前に進まないと訴えてみせる。この核心となる曲から本作は始まり、逆に最終曲“ブラッド”の銃声とともに絶命するのは、その死んでいたかもしれないケンドリックなのだ。時系列順に綴られるこの物語もまた壮絶だ。(高見展)



『ダム (コレクターズ・エディション)』の詳細はUNIVERSAL MUSIC JAPANの公式サイトよりご確認下さい。

ケンドリック・ラマー『ダム (コレクターズ・エディション)』のディスク・レビューは現在発売中の「ロッキング・オン」9月号に掲載中です。
ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。


ケンドリック・ラマー ダム (コレクターズ・エディション) - 『rockin'on』2018年9月号『rockin'on』2018年9月号
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