そりゃいろいろあったかもしれないが、この道20年近くのベテランである。昨年のライブを観ても余裕の完全試合という感じだったし、『インヴェーダーズ・マスト・ダイ』というアルバム・タイトルを聞いたときも、オコサマが人のフンドシ借りてニュー・レイヴだとか何だとか甘っちょろいこと言ってんじゃねえぞとでもいうような、つまりよくも悪くも堂々とした、手堅いものになるのだろうと想像していた。
しかし実際到着したアルバムは、確かにプロディジー以外の何物でもない音ではあったが、想像以上にキレキレで攻撃的なものだった。過去によりかかるでも、必要以上に「いま」に媚びるでもなく、セカンド・サマー・オブ・ラヴからビッグ・ビートまでこの20年のダンス・ミュージックの蓄積を隋所で活用しつつ、当たり前のようにアクチュアルな音を噴射している。キャリアや知名度を差し引いても、いまのシーンで勝ててしまうアルバムなのだ。ここ数年ギクシャクしていた3人の関係を修復して臨んだ新作ということで当然気合いは入っていただろうし、新レーベルを立ち上げるなど、プロディジーの個人史的変化がこのリフレッシュを促した側面が強いが、同時にこの作品が続出するプロディジー・チルドレンに対する強烈なアンサーであることも確かである。しかもそれがよくある「オリジネイターがフォロワーをねじ伏せる」ようなものではなく、むしろ新しい世代と共同戦線を張るようなテンションなのが痛快。プロディジーは相変わらず最前線で闘っているのだ。(小川智宏)
キャリア20年の特攻隊長
プロディジー『インヴェイダーズ・マスト・ダイ』
2009年02月25日発売
2009年02月25日発売
ALBUM