ところが、歌が始まった途端に雲行きが怪しくなる。
《間違ってなんかないのに/誤魔化す癖がついたな/疑うのが怖いから/もう全部諦めてる》
この歌詞に身に覚えのある人も少なくないのではないだろうか。自分を理解してもらうのも、相手を理解するのも大変で、その骨の折れるようなコミュニケーションに疲れてしまったとき、すべてがどうでもよくなって他人に期待しなくなる。そんな虚しさがこの4行にはこめられている。
じゃあ、自分を押し殺したままでいいのだろうか。
《色褪せてた感情も/捨てかけた心情も/“間違ってない”/この失敗が今の僕を作っている》
結果論なのかもしれない。でも、あらゆる出来事がなければ今の自分は存在していないと思えたなら、自分を認めてあげられるし、相手の失敗も大目に見ることができるのではないか。
そんなメッセージを伝えるには、5分19秒の長さは必然だと思う。
曲を聴き終えたとき、タイトルが“アンバランスブレンド”だったことを思い出す。それぞれ違う一人ひとりが分かり合おうとする行為は、お互いの中間地点を探すというのとも全然違う。
そう頭では理解しても難しくて、やっぱり歩み寄ってほしくて、もう少し人の気持ちを理解したくなって、また初めからこの曲を再生してしまうのだ。(有本早季)
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