マイアミの終わらない夏

トーリー・レインズ『ラヴ・ミー・ナウ?』
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ALBUM
トーリー・レインズ ラヴ・ミー・ナウ?

現在26歳のトーリー・レインズは、トロント出身のラッパー/R&Bシンガーである。トロントというと、ご存じドレイクの街で、だからレインズも、デビューしたての頃は「次のドレイク候補?」みたいな文脈で語られることが多かった。

でも、今のレインズは生活の拠点をマイアミに移していて、音の傾向も、どんどん「脱トロント化」が進んでいる。通算3作目となる本作は、そんな彼の現在地を象徴するような「マイアミ・フレーバー」な一枚。ゲストも過去最高に豪華で、ヒップホップ(ミーク・ミル、2チェインズなど)とR&B(クリス・ブラウン、トレイ・ソングスなど)、両方のジャンルから「二刀流」的に程よくブレンドされている。全体のムードをわかりやすく言うなら、真夏の夜のプールサイドと、お洒落なクラブのVIPシートと、よく冷えたシャンパンが似合う、本物のパーリー・ピーポーのためのパーリー・アルバムである。

レインズの歌のテーマは、ほとんど(はっきり言って99パーセント)が、パーティ三昧の人生と、女の子と、高級車についてだ。もちろん今のヒップホップ/R&Bチャートはその手の歌で溢れ返っているわけだけど(それは、今のアメリカの「共同幻想」なのだ)、その中でもレインズがすごいのは、そういった定番ネタを何べん歌っても、決してウソっぽくならないこと。彼の歌を聴くと、セレブなパーティの光景が瞬時にスッと浮かび上がってくる。見た目はチャラそうだけど、ソングライターとしては、実は職人的な「努力の人」なのでは?と、僕はひそかに睨んでいる。

それか、ひょっとしたら、ただ単に、本当の本当にチャラい人なのかもしれない。それもあり得る。それはそれで、すごい才能だけど。(内瀬戸久司)



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トーリー・レインズ『ラヴ・ミー・ナウ?』のディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』1月号に掲載中です。
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トーリー・レインズ ラヴ・ミー・ナウ? - 『rockin'on』2019年1月号『rockin'on』2019年1月号
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