ブルックリンを拠点に活動するSSW、シャロン・ヴァン・エッテンの5年ぶりの最新アルバムになる。この間も彼女は、ハーキュリーズ&ラヴ・アフェアの新作やグレイトフル・デッドのトリビュート盤に参加。さらに映画音楽の制作や、Netflix配信のドラマに女優として出演を果たすなど充実した時間を過ごしてきた。最近では、ロイヤル・アルバート・ホールでオーケストラを迎えて披露されたLCDサウンドシステム“ニュー・ヨーク、アイ・ラヴ・ユー〜”のカバーも記憶に新しいところ。そうしたなかリリースされるこの5作目は、彼女のイメージを新たにするアルバムとなるに違いない。
彼女がピアノで制作した楽曲を元に、セイント・ヴィンセントの近作も手がけたジョン・コングルトンのプロデュースにより完成した本作。その経緯が物語るとおり、彼女の情熱的で深く喉を震わせた歌はそのままに、大胆なアレンジが施された音響面のプロダクションが本作の特徴。ニュー・ウェイブ風のリード曲③をはじめ、打ち込みのビートやモダン・クラシカルな楽器の配置、ダビーでアンビエントな電子音が全編をドラマチックに彩る。ややオーセンティックな趣だった前作『アー・ウィー・ゼア』とは異なり、また、所謂SSW的な作風からも逸脱。とりわけ⑥を挟んだ中盤の流れは素晴らしく、それこそボウイやデイヴィッド・バーン(引いてはイーノ)の面影も浮かぶエクレクティックでエキセントリックなポップ・スタイルを彼女は見事自らのものとしている、といっていい。ゲストでウォーペイントのステラ・モズガワやアトムス・フォー・ピースのジョーイ・ワロンカー、ジャガ・ジャジストのラーシュ・ホーントヴェットらが参加。2019年で正式デビューから10年。新たな代表作となる一枚だろう。(天井潤之介)
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シャロン・ヴァン・エッテン『リマインド・ミー・トゥモロー』のディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』2月号に掲載中です。
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