『ツイン・ピークス』の見所のひとつ〈バン・バン・バー〉とは? 新シリーズでの進化も解説

『ツイン・ピークス』の見所のひとつ〈バン・バン・バー〉とは? 新シリーズでの進化も解説

90年代の初め、大ブームを巻き起こしながら、多くの謎が解決しないままに幕を閉じ、それ以後アメドラ界の「伝説」として語り継がれてきたTVドラマ『ツイン・ピークス』。

しかし、今年の5月、デヴィッド・リンチが全エピソードを監督する形で、「まさか!」の新シリーズ『ツイン・ピークス The Return』の全米オンエアが始まったことは、先日もお伝えしたとおり。待望の日本での放映は7月22日(土)、WOWOWにてスタートの予定。今から心待ちにしている方も、きっとたくさんいることだろう。

 ひと足先に幕を開けた全米では、すでに第8話までが放映済み(6月25日現在)。いきなりの謎だらけの展開に、ネットやSNS上では、早くも空前のフィーバーが巻き起こっているという。

そんな『~The Return』をめぐるトピックの中でも、音楽ファンの間で特に話題となっているのが、いかにも「リンチ好み」な至福のドリーム・ポップをかき鳴らすバンドが毎回のように入れ替わりゲスト出演する〈バン・バン・バー(The Bang Bang Bar)〉での演奏シーンだ。

○その前に……〈バン・バン・バー〉って何のこと?

 旧シリーズのファンの方には説明不要だろう。が、念のために補足しておくと、〈バン・バン・バー〉は、『ツイン・ピークス』の劇中に登場し、時に“ロードハウス”の愛称(町はずれの道路沿いにあるから!)でも親しまれていた酒場(兼ライヴハウス)のこと。食事をしたり、お酒を飲んだりする他に、バンドの生演奏もまったりと楽しめる、ツイン・ピークスきっての人気ナイトスポットなのである。

旧シリーズの物語では、クーパー捜査官(カイル・マクラクラン)をはじめ、おなじみの登場人物の多くが、この店の常連客だった。訪れる理由はそれぞれに違えど、ツイン・ピークスの人々にとって、〈バン・バン・バー〉は、言ってみれば「心のオアシス」のような場所であった。革ジャン姿のバイカーたちは喉をうるおすために。カップルはお互いの愛を確かめ合うために。

そして――誰かにとって、本当に大切なものが失われてしまったようなときには――悲しい現実を忘れ、世界でもっとも天使に近いシンガー、ジュリー・クルーズの美しい歌声に、ただただ溺れるために。

https://www.youtube.com/watch?v=8bAIjzeymyU

○新しい〈バン・バン・バー〉は、何がどう「進化」しているのか?

そんな〈バン・バン・バー〉は、新シリーズの『ツイン・ピークス』の物語にも帰ってくる。建物や店内の様子は、パッと見には変わっておらず(あのピストルのネオンの看板も!)、あれから長い年月が過ぎたとは信じられないはず。

ただ、変わった点もある。まず、ひとつ目は、旧シリーズに比べ、ゲスト出演するバンドの数が増えたこと(ほとんどのエピソードに入れ替わり登場する)。そして2点目は、その顔ぶれがいずれも、音楽的に「ツイン・ピークス・チルドレン!」とでも呼べそうな、新世代のインディ・バンドにアップデイトされていること。たとえば、第2話に登場するのはクロマティックス、演奏される曲は“Shadow”だ。

クロマティックスは、他にも100個くらいのサイド・プロジェクト(グラス・キャンディとか、ディザイアーとか、シンメトリーとか、ヘヴンとか!)を抱えるジョニー・ジュエルが自らプロデューサーも務めている4人組バンド。
映画ファンの方は、ニコラス・ウィンディング・レフンが監督で、『ラ・ラ・ランド』のライアン・ゴズリングが主演した『ドライヴ』のオープニング・シーンで、彼らの“Tick of the Clock”が効果的に使われていたのを覚えているかもしれない。

ジュエルは、自他ともに認めるデヴィッド・リンチ監督の大ファン。つい先日に発表された“Shadow”のMV(監督:Rene&Redka)も、思いっきり『ツイン・ピークス』&ジュリー・クルーズへのオマージュ作品となっていた。それだけに今回のゲスト出演は、彼にとって「聖地巡礼」にも似た“夢のコラボ”だったことだろう。


一方、デヴィッド・リンチ監督の方も、彼らの音楽がよっぽどお気に入りらしく、その証拠に、クロマティクスはLAで開かれた『ツイン・ピークスThe Return』プレミア上映会のアフター・パーティでも演奏し、ドラマの出演者たちからも熱狂的に迎えられたという。クロマティックスと関わりの深いバンド/アーティストは、第2話以降も、まだまだいろんな形で劇中に登場することになりそうだ。

さらに、新シリーズで〈バン・バン・バー〉のステージに立つのは、ジョニー・ジュエル界隈だけではない。すでに全米で放映済みのエピソードでは、オー・ルヴォワール・シモーヌ(デヴィッド・リンチの結婚式でハウス・バンドも務めた3人組ガールズ・バンド)やシャロン・ヴァン・エッテン('14年の傑作アルバム『アー・ウィー・ゼア』から、あの曲が!)などの出演も確認されている。


では、全18話が完結するとき、最終的に何組のバンドが出演するのか? 現時点ではそこまでは不明だが、今のペースで増えていけば、かなりの数になるはず。ひょっとしてオンエアが終わる頃には、歴代の〈バン・バン・バー〉の全出演アーティストがどこかに集い、盛大に「バン・バン・フェス」とか開催しちゃったりするのかも!?!?……と、フライング気味で、そんな妄想にも心を躍らせつつ、まずは日本語版の放送スタートを楽しみに待ちましょう。

「いや、そんなに待てない!」というせっかちな方は……お約束ですけど、こちらの特別動画をどうぞ。


(内瀬戸久司)
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